063_罹災証明の判定が確定していく週 — 応急修理・自力再建・公費解体の申請が重なる9月を、勤務時間の中でどう受け止めるか

熊本市の第24回災害対策本部会議資料(8月21日)によれば、市内の罹災証明書は申請1万1,982件に対し発行6,629件、発行率55.3%である。住家被害認定調査は4,778件を終え、全壊69・大規模半壊266・中規模半壊285・半壊773・準半壊3,383・一部損壊2の判定が出ている。つまり、これから9月にかけて判定が手元に届く従業員が大量に生まれる。判定が出た瞬間から、応急修理・公費解体・被災者生活再建支援金という別々の制度の申請が同時に走り出す。この記事は、それらを期限順に並べ替え、どれを急ぎ、どれを急がなくてよいかを職場の側から示すためのものである。罹災証明をこれから申請する段階の実務は記事022で扱った。本記事はその次、判定が確定して制度の申請が重なる段階を扱う。

目次

期限を並べ替えると、休みの取り方が変わる

従業員が「全部いますぐやらなければ」と考えると、9月の前半に有給が集中して枯れる。期限はそろっていないので、まず並べ替える。

最も急ぐのは住宅の応急修理である。熊本県の案内では、令和8年10月27日までに完了することが要件とされている(延長が協議されていると案内されているが、本日時点で延長は確定していない)。完了までであって申請までではない。9月中に業者の見積・契約・着工まで進まなければ間に合わない可能性が高い。

次が公費解体である。熊本市では予約開始が8月25日(火)、申請書類の受付が9月10日から12月10日まで(月〜金。9月は土日祝も対応)とされている。受付期間には3か月の幅があるが、予約と書類準備の所要時間を考えると9月中に着手したい。

急がないのが被災者生活再建支援金である。申請期限は基礎支援金が令和9年8月27日、加算支援金が令和11年8月27日である。基礎は約1年、加算は約3年ある。ここを9月に無理に詰め込む必要はない。災害弔慰金・災害障害見舞金との切り分けは記事045にまとめている。

延びた期限と延びていない期限の全体像は記事050を参照されたい。応急修理は「延びていない側」に属する。

取り返しがつかない順序が2つある

制度には、順序を間違えると後から回復できないものがある。9月に周知すべき優先順位の第一はここである。

ひとつは応急修理の先払いである。この制度は、あらかじめ業者から見積書等を取得して市町村に申し込む必要があり、自分で先に支払ってしまうと制度を利用できない。屋根の雨漏りや建具の破損に耐えかねて、判定を待たずに業者と契約し支払ってしまう例は起こりうる。金額の目安は全壊・大規模半壊・中規模半壊・半壊で757,000円以内、準半壊で367,000円以内である。数十万円の差が、支払いの順序ひとつで消える。

もうひとつは解体前の写真である。自費で解体した場合も費用償還の対象になりうるが、熊本市の案内では解体前後の写真、契約書・見積書・領収証、廃棄物処理帳票が必要とされている。解体が済んでしまえば、解体前の写真は二度と撮れない。なお建物の一部の解体は対象外とされ、市の基準を超える部分は自己負担となる。

この2点は、判定の内容にも本人の意向にも関係なく全員に当てはまる。社内掲示や朝礼で伝えるなら、制度の全体像より先にこの2行を出したい。

判定への不服には、職場は踏み込まない

判定に納得がいかない場合、被災者は市町村に再調査(二次調査)を申請できる。判定は応急修理の対象範囲、公費解体の可否、支援金の区分をすべて左右するため、本人にとっては重い。

ただし職場は、判定が妥当かどうかに意見を述べる立場にない。「その壊れ方なら半壊は出るはずだ」「準半壊で妥当だろう」といった発言は、本人の判断を歪めるうえ、後で外れたときに関係を損なう。職場が担うのは、再調査を申請するなら平日日中の窓口対応が要る、その時間をどう空けるかという一点である。判断の内容は市町村窓口と本人に委ねる。

9月は業者が逼迫する前提で、月単位で休みを設計する

休暇制度そのものの設計は記事022で扱った。ここでは9月に必要になる時間の量を見積もる側に絞る。

住家被害認定調査が進めば、修理・解体の需要は9月に集中する。見積の取得に数日ではなく数週間かかること、契約後の着工が翌月に回ることを前提に置く。従業員に「今週中に見積を取れ」と急かしても、業者の側が空いていない。9月に着手した用件の相当部分は10月にずれ込むと見ておく方が、実態に近い。

そのうえで、平日日中でなければ動かない用件を一覧にしておく。罹災証明書の受け取り、公費解体の予約と申請受付(熊本市は平日9〜17時、9月の申請受付は土日祝も対応とされる)、再調査の申請、支援金の申請、金融機関や社会福祉協議会での相談がこれにあたる。これらは1回で終わらず、1件あたり2〜3回の来訪になることが多い。

必要な時間の総量は、この来訪回数から積み上げるほかない。9月は月初に「今月何回、どのくらいの時間が要りそうか」を本人に見積もってもらい、シフトに先に穴を空けておく方が、当日申請の積み重ねより現場が回る。住まいが決まる人と決まらない人で必要な時間がまったく違う点は記事054で扱った。

自社が建設業で、この需要集中の受け手になる場合の安全管理は別の問題である。屋根上作業と工期の逼迫については記事029、解体・廃棄物処理側の作業安全は記事062で扱っている。厚生労働省第55報(8月19日19時時点)では復旧作業に伴う労働災害が死亡17人・休業4日以上81人と発表されている。

資金繰りの相談先を、金額より先に渡す

制度の金額は目安として示せる。被災者生活再建支援金は基礎支援金が全壊・解体・長期避難100万円、大規模半壊50万円、加算支援金が建設・購入200万円、補修100万円、賃借50万円である。生活福祉資金の緊急小口資金は1世帯1回限りで原則10万円以内、特例で20万円以内、無利子・据置1年・償還2年以内とされている。

ただし、いくら足りないかは世帯ごとに違う。職場が計算に立ち入るのは適切でない。示すべきは相談先である。市町村の窓口と、災害専用フリーダイヤル 0120-091-110 を一行で案内し、そこで聞けることを伝える。公的支援全体の一覧は記事020にある。

在宅で生活しながら出勤している従業員は、こうした情報が届きにくい層と重なる(記事059)。掲示だけで済ませず、直接手渡す経路を1本持っておきたい。

実務でそのまま使えるチェックリスト

#確認すること・決めること誰が期限の目安
1「応急修理は先に自分で払うと使えない」「解体前の写真を必ず撮る」の2点を、制度説明より先に周知する人事総務今週中
2制度ごとの期限一覧(応急修理10月27日完了/公費解体申請12月10日/基礎支援金令和9年8月27日/加算支援金令和11年8月27日)を1枚にまとめて配布する人事総務8月中
3罹災証明の判定が出た従業員を把握する仕組みを決める(自己申告のハードルを下げる)人事総務8月中
4公費解体の予約開始(熊本市8月25日)に合わせ、該当しうる従業員へ日程だけ先に伝える人事総務8月25日まで
5平日日中でなければ動かない用件の一覧を作り、想定回数を本人と共有する上長/人事総務9月初
6記事022で設計した休暇運用が、9月の需要量に耐えるかを再点検する人事総務9月初
79月の休暇需要を月初に集約し、シフトに先に空きを作る上長9月第1週
8判定の当否には職場として意見を述べないことを、管理職に周知する産業保健職/人事総務今週中
9相談先(市町村窓口、災害専用フリーダイヤル 0120-091-110)を掲示と手渡しの両方で案内する人事総務8月中
10見積・契約が想定より遅れる前提で、10月にずれ込んだ場合の休暇需要も見込んでおく人事総務9月中旬

参考

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