本日8月18日、八代市が残る17戸に着手する予定と示され、建設型応急住宅は整備決定222戸13団地のすべてが着工に入る見込みとなった(国土交通省第43報・8月17日8時時点)。入居は9月上旬から10月中旬の見込みである。この記事は、被災地の従業員を抱える人事総務と、9月以降の生活変化を健康面から見ていく産業保健職に向けて、入居が始まる前の2週間と、始まってからの1か月に職場が何をしておくかを整理する。避難所からの移行そのものは記事026で扱った。今回は、住まいが決まる人と決まらない人に分かれることを前提にした設計を扱う。
数字で見ると、9月に住まいが決まるのは一部である
建設型応急住宅の整備決定は222戸で、内訳は熊本市50戸3団地、八代市35戸2団地、宇城市50戸3団地、氷川町75戸4団地、美里町12戸1団地である。着工日は宇城市と氷川町が8月3日、美里町が8月9日、熊本市が8月10日、八代市が8月11日と本日18日で、県内5市町に分かれている。
一方、住家被害は熊本県第31報(8月17日8時時点)で全壊1,449棟、大規模半壊72棟、半壊1,268棟、一部破損1万1,587棟、分類未確定1万7,268棟である。全壊から半壊までを合わせると2,789棟であり、建設型222戸との差は大きい。この差は、賃貸型応急住宅(8月16日現在で17市町村が受付中)、公営住宅の空室(県内376戸)、UR賃貸住宅(全国140戸)、そして親族宅や自力での住み替えによって埋まっていく。
さらに、住家被害の分類未確定が1万7,268棟あり、罹災証明書の判定はまだ進行中である。判定が出ていなければ支援の入口に立てない世帯もある。つまり9月というのは、「入居して落ち着く人」「入居先が決まって待つ人」「判定を待っていて何も決まらない人」が同時に存在する時期になる。避難者は8月17日8時時点で70か所3,087人(うち八代市1,704人)で、減り方は前日比34人と鈍っている。残っている層ほど、次の行き先が決まりにくい層である可能性が高い。
職場が「9月には皆さん落ち着きますね」と一括りに扱うと、決まっていない人ほど言い出せなくなる。強い被害を受けた人が身近にいるほど自分の困りごとを申告しなくなる現象は記事009で扱ったとおりである。
入居は「落ち着き」ではなく、もう一度の引越しである
応急住宅への入居は、生活が回復する節目のように語られやすい。しかし当人にとっては、被災後2回目、場合によっては3回目の移動である。避難所から2次避難のホテルへ移り、そこから応急住宅へ移った人は、7月28日以降に3回住まいを変えたことになる。
引越しには時間と体力と費用がかかる。応急住宅は原則として空の状態で引き渡されるため、寝具、冷蔵庫、洗濯機、カーテン、調理器具を揃える必要がある。日本赤十字社や自治体、企業からの生活家電の提供が行われる場合もあるが、届く時期は団地ごとに異なる。入居直後の数日から数週間、生活が整わないまま出勤する従業員が出ることを見込んでおきたい。
職場としてできることは限られるが、次の3つは効果が大きい。第一に、入居に伴う休暇を取りやすくすること。半日単位や時間単位で取得できるようにし、「引越しのため」と書けば通ることを明示する。第二に、入居予定日を早めに申告してもらい、その週の業務量を事前に調整すること。第三に、勤務時間中に手続きに行けるようにすること。入居手続き、住民票の異動、ライフラインの開通立ち会いは平日の日中に集中する。窓口対応を勤務時間の中で受け止める考え方は記事022と記事044にまとめている。
分散した先で、誰が孤立するか
避難所には、良し悪しは別として人の目があった。保健師等チームは35チーム、災害支援ナースは県内外54名(8月16日12時時点)が活動しており、避難所と介護施設が支援の重心になっている(厚生労働省第52報)。応急住宅への入居は、この目の届く場所から出ていくことを意味する。2016年の熊本地震でも、仮設住宅入居後に孤立や生活不活発が問題になった。
特に注意したいのは次の層である。単身者、とりわけ単身の中高年男性は、地域の集まりに参加しにくく、生活の乱れが外から見えにくい。遠方の団地に入居した人は、元の生活圏から切り離される。介護や育児を抱えた人は、支援の担い手が近くにいなくなる。持病があり通院していた人は、かかりつけとの距離が変わる。
支援チームが縮小している局面であることも重要である。DMATは13隊から12隊、DPATは14隊から11隊、DHEATは8チームから7チーム、JRATは13チームから12チームへと減っている。避難所を出た人を誰が見るのかという問いに、外部支援だけで答えられる時期は過ぎつつある(記事039、記事047)。職域が果たせる役割は、毎日の出勤という接点を持っていることそのものである。
職場の名簿は、9月に一度壊れる
8月上旬にも避難所の統合で連絡先が入れ替わった(記事041)。9月はそれより大きな入れ替わりになる。住所、電話番号、緊急連絡先、通勤経路、通勤手当の算定基礎が、同じ月のうちに複数の従業員で同時に変わる。
名簿の更新は総務の事務手続きに見えるが、災害後は安否確認と健康管理の土台である。更新できていない名簿は、次の余震のときに機能しない。気象庁は今後1か月程度、最大震度5弱程度以上の地震に注意を呼びかけている。9月の入居ラッシュと余震への備えが重なることを前提に、更新の期限を先に決めておきたい。
通勤経路と通勤方法の変更については、鹿児島本線の代行バスと合わせて記事053に整理した。
実務でそのまま使えるチェックリスト
| 時期 | やること | 補足 |
|---|---|---|
| 8月中 | 従業員の現在の居所を「避難所/2次避難/親族宅/賃貸型・公営/自宅」で分類する | 分類は個人が特定されない形で集計し、支援の設計に使う |
| 8月中 | 入居予定の有無と時期を任意で申告してもらう窓口を作る | 「決まっていない」も選べる選択肢にする |
| 8月中 | 引越しに使える休暇の運用を決め、社内に周知する | 半日・時間単位、「引越しのため」で申請可 |
| 8月中 | 住所変更届と通勤手当の再計算の締切を9月末までとし、事後申告を可とする | 締切を厳格にしない旨を明記 |
| 9月上旬 | 入居予定者の該当週の業務量を調整する | 繁忙期と重なる部署から先に手当てする |
| 9月上旬 | 名簿の一斉更新を実施(住所・電話・緊急連絡先・通勤経路) | 余震への備えとして期限を切る |
| 9月中 | 入居後2週間以内に一声かける担当を決める | 単身者・遠方転居者・持病のある人を優先 |
| 9月中 | かかりつけ医療機関との距離が変わった人の受診計画を確認する | 断水が残る地域の医療機関は記事033 |
| 9月〜10月 | 入居が決まらない人の状況を月1回確認する | 罹災証明の判定待ちは支援の入口で止まっている |
| 通年 | 生活不活発・孤立の兆候を面談項目に加える | 中長期のメンタルヘルスは記事015 |