055_休業災害が5日で41人増えた — 労働者死傷病報告が積み上がる週に、事業場が今日から手を付けること

復旧作業に伴う労働災害のうち休業4日以上が、8月13日19時時点の29人から、8月18日19時時点で70人になったと厚生労働省が公表している。死亡17人は変わっていない。この記事は、被災地とその周辺で復旧・修理・応援業務を抱えている事業場の人事総務・安全衛生担当と、そこに関わる産業保健職に向けて書いている。増えた41人が何を意味するのか、そして労働者死傷病報告の実務として今週なにを終わらせておくべきかを整理する。負傷そのものの防ぎ方は記事042、労災と災害弔慰金の切り分けは記事045に書いた。ここでは「報告」に焦点を絞る。

目次

41人は「今週起きた災害」ではない

まず数字の性質を押さえたい。厚生労働省の第54報は8月18日19時時点で確認された件数であり、第53報は8月17日19時時点で57人だった。29人(8月13日19時時点)から57人、そして70人へと、2日間で急に積み上がっている。この間に現場で何かが激変したと考えるより、8月13日から16日にかけての連休で止まっていた報告が、17日以降の窓口再開とともに一気に到達したと読むほうが自然である。

つまり41人の多くは、すでに数日から2週間前に負傷していた人たちである。これは2つのことを意味する。第一に、いま公表されている70人という数字も、実態に対してまだ遅れている。休業1日から3日の災害と不休災害は四半期ごとの報告であり、この数字には入らない。第二に、遅れて出てきたということは、その間の再発防止が打たれていない可能性がある。同じ場所・同じ作業で二度目が起きるまでの時間を、報告の遅れが食いつぶしている。

2025年1月からの様式で、何が余計に必要になったか

労働者死傷病報告は2025年1月から電子申請が原則義務化され、様式も変わっている。被災地の復旧現場では、この変更が実務上の負荷として効いてくる。

休業4日以上と死亡は従来どおり「遅滞なく」提出する。休業1日から3日は四半期ごとにまとめ、翌月末までに提出する。変わったのは記載内容である。事業の種類は日本標準産業分類の4桁コード、職種は日本標準職業分類の3桁コードで記載する。災害発生状況は「どのような場所で」「どのような作業をしているときに」「どのような物または環境に」「どのような不安全な状態があって」「どのような災害が発生したか」の5要素に沿って書く。

そして休業4日未満の報告には、従来は不要だった労働保険番号、被災者の経験期間、国籍・在留資格、親事業場等の名称、災害発生場所の住所が必要になった。復旧工事の現場は重層下請が常態で、外国人労働者も少なくない。応援に入って数日で現場を離れた人の在留資格や経験期間を、四半期末になってから遡って集めるのは難しい。負傷した時点で聞き取り、記録に残しておく体制を今週のうちに作っておきたい。外国人労働者への情報提供全般は記事017を参照されたい。

誰が出すのかを、現場ごとに決めておく

報告義務を負うのは、被災した労働者を雇用している事業者である。復旧現場では、この当たり前が曖昧になりやすい。

建設業の重層下請では、負傷したのが二次下請の従業員であれば、報告を出すのはその二次下請の事業者になる。元請が把握していても、下請が出さなければ報告は上がらない。元請の安全衛生担当は、災害の発生を掴んだ段階で「報告は誰が、どこの労働基準監督署に、いつまでに出すか」を確認し、記録に残しておくとよい。

派遣労働者が被災した場合は、派遣元と派遣先の双方が報告を出す。派遣先が作成した報告の写しを派遣元に送付する扱いになっている。被災地の応援要員として県外から自社の従業員を送っている場合、災害が起きた場所を管轄する労働基準監督署が提出先になる。応援要員の派遣そのものの設計は記事048に整理した。

数字に出ていない災害を、社内で拾う

70人という数字は、休業4日以上に限った、しかも報告済みのものだけである。産業保健職の側から見て、いま拾いにいく価値が高いのは次の3種類である。

ひとつは熱中症である。8月20日を対象とする熱中症警戒アラートは熊本県を含む西日本12府県に発表され、熊本の予想最高気温は38度、猛暑は26日ごろまで続く見込みとされている。熱中症は「少し休んだら戻った」で処理されやすく、休業に至らなければ四半期報告に回る。しかし同じ人が同じ現場で二度目を起こすリスクは高い。アラートの有無を作業中止の唯一の基準にしないという論点は記事043に書いた。

ふたつめは、応急修理に伴う墜落・転落である。屋根上作業の集中については記事029で扱った。応急住宅の着工が276戸15団地へ拡大し、8月19日には美里町・甲佐町が新たに加わっている。工事量は増加局面にある。

みっつめは、通勤中の被災である。鹿児島本線は8月19日から宇土〜小川で代行バスが始まり、26日に宇土〜八代へ拡大する。乗り継ぎと徒歩移動が増える時期は、通勤災害が増えやすい。通勤の組み直しは記事053にまとめてある。

産業保健職が報告書に関わる意味

労働者死傷病報告を書くのは通常、総務か安全衛生担当である。ただし新様式の「どのような不安全な状態があって」という欄は、現場を見ていないと書けない。ここが空欄や一般論で埋まると、報告は提出されても再発防止には結び付かない。

産業医・保健師が関与できるのは、負傷者本人からの聞き取りと、その内容を不安全な状態の記述に翻訳する部分である。「暑かった」ではなく「WBGT30を超えていたが休憩は2時間ごとだった」、「足を滑らせた」ではなく「散水後の床面で保護具の指定がなかった」と書けるかどうかで、報告書の価値は変わる。復旧作業の5大リスクは記事005に整理してある。

実務でそのまま使えるチェックリスト

#項目期限の目安
17月28日以降に発生した自社・協力会社の負傷を、休業日数を問わず一覧化する今週中
2休業4日以上で未提出のものがないか確認し、あれば直ちに提出する発見次第
3休業1〜3日・不休の災害について、労働保険番号・経験期間・国籍・在留資格・親事業場名・発生場所住所を本人が現場にいるうちに聴取する発生の都度
4電子申請のアカウントと入力担当者を決め、代替担当を1名置く今週中
5重層下請の現場ごとに、報告義務者と提出先の労働基準監督署を書き出す今週中
6派遣労働者の被災について、派遣元への写し送付の運用を確認する今週中
7「不安全な状態」欄の記載に産業医・保健師が目を通す運用を決める次回衛生委員会まで
8熱中症・墜落・通勤の3類型について、社内の「病院に行った」記録と報告済み件数を突き合わせる今月中
9同一現場・同一作業での再発がないか、直近2週間分を点検する今週中
10復旧作業を続ける期間の見通しを踏まえ、9月以降の報告体制を決めておく8月末まで

参考

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