建設型応急住宅の整備決定・着工が276戸15団地となり、8月19日には美里町12戸と甲佐町20戸が新たに加わった。入居は9月上旬から10月中旬の見込みで、工期はきわめて短い。同じ時期に、断水5,429戸の管路復旧が8月末の解消目標に向けて追い込みに入り、全壊1,515棟へと増えた判定結果を受けた応急修理の申込みも集中する。この記事は、建設・設備・住宅関連の事業者と人事総務、これらに発注する側の総務、そして両者に関わる産業保健職に向けて、これから3週間の労働時間管理をどう組むかを整理する。負傷の防ぎ方は記事042、報告実務は記事055に分けて書いた。
何が、いつまでに集中するのか
いま把握できている工事量を並べると、9月上旬までの2〜3週間に負荷が集まる構図が見える。
応急住宅は熊本市50戸3団地、八代市69戸3団地、宇城市50戸3団地、氷川町75戸4団地、美里町12戸1団地、甲佐町20戸1団地の計276戸15団地。9月上旬入居を目指す団地は、逆算すると8月中に躯体と設備を終える必要がある。水道は残る断水が宇城市2,910戸、八代市1,365戸、氷川町1,154戸で、いずれも管路破損によるものと発表されており、8月末の解消を目指した掘削・接続作業が続く。住家被害は計3万3,552棟で、判定の精査に伴い全壊が1,515棟へ増えた。判定が確定した世帯から応急修理と解体の申込みが動き出す。賃貸型応急住宅の受付は21市町村へ広がり、入退去に伴う原状回復や運搬の需要も出る。
つまり、同じ地域の同じ職種に、性質の違う仕事が同時に降ってくる。人を増やせない事業場では、これが労働時間としてそのまま現れる。
特例で外れるのは「月100時間・複数月80時間」だけ
建設業には2024年4月から時間外労働の上限規制が本格適用されている。そのうえで、災害時における復旧および復興の事業については、時間外労働と休日労働の合計を月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内とする規制が適用されないと厚生労働省は説明している。
ここで取り違えが起きやすい。外れるのはこの2つの上限であって、規制全体ではない。年720時間の上限、原則である月45時間・年360時間、特別条項を適用できる月数の制限は、復旧・復興の事業でも引き続きかかると整理されている。「災害復旧だから青天井」という理解で36協定を運用すると、年720時間の側で先に抵触する。
もうひとつの取り違えは、事業単位の判断である。特例が及ぶのは災害の復旧および復興の事業であり、会社全体ではない。応急住宅の建設に従事する部門と、被災前から続く民間工事を続ける部門とでは、扱いが異なりうる。同じ従業員が両方に従事する場合の整理も含めて、自社の実態がどちらに当たるかは所轄の労働基準監督署に確認したうえで36協定を点検してほしい。
なお、労働基準法33条1項による災害等の臨時の必要がある場合の時間外労働は、上限規制とは別の仕組みである。行政官庁の許可(事態が急迫している場合は事後の届出)が必要で、必要の限度に限られる。これも無制限ではない。
規制が外れても、健康管理の義務は外れない
月100時間、複数月平均80時間という数字は、上限規制だけの数字ではない。脳・心臓疾患の労災認定における過重負荷の目安であり、医師による面接指導の基準としても使われている。時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者から申出があった場合の面接指導は、復旧・復興の事業であっても事業者の義務として残る。上限規制の特例は、健康障害のリスクを下げるものではない。
今回の局面では、これに暑熱が重なる。8月20日を対象とする熱中症警戒アラートは熊本県を含む西日本12府県に発表され、熊本の予想最高気温は38度、猛暑は26日ごろまで続くと見込まれている。同じ労働時間でも、身体への負荷は平時と違う。
さらに、作業に当たる人自身が被災者である場合が多い。断水が残る地域では、勤務が終わってから給水に並ぶ時間が生活の中に組み込まれている。夜間給水制限が始まった地域の生活時間は記事051、給水の時間をどこに置くかは記事030に整理した。労働時間だけを見て「まだ余裕がある」と判断すると、実際の回復時間を見誤る。
発注する側が決めている労働時間がある
工期、作業時間帯、休日稼働の可否は、多くの場合、発注者の設定によって決まる。被災地では自治体や事業会社が発注者になる場面が増えており、自社の建物の応急修理や貯水槽の清掃を外部に頼む場面も含まれる。
発注側の総務が確認できることは限られているが、次の3つは効く。ひとつは、工期を短縮する変更を求めるときに、それが夜間・休日の作業増につながらないかを確認すること。ふたつめは、猛暑日の作業中断を工程遅延として扱わない旨をあらかじめ伝えること。みっつめは、宿泊と移動の手配を発注側で持つことである。応援要員の宿泊・移動・水の設計は記事048に書いた。断水解消後の貯水槽再稼働は記事027を参照されたい。
実務でそのまま使えるチェックリスト
| # | 項目 | 担当 |
|---|---|---|
| 1 | 自社の事業のうち、災害の復旧・復興の事業に当たる範囲を書き出し、所轄労働基準監督署に確認する | 人事総務 |
| 2 | 36協定の特別条項について、年720時間と適用月数の残余を人ごとに算出する | 人事総務 |
| 3 | 復旧・復興の事業と平常業務を兼務する従業員を特定し、時間の按分方法を決める | 人事総務 |
| 4 | 労働基準法33条1項による時間外労働を行う場合の許可・届出の手順を確認する | 人事総務 |
| 5 | 時間外・休日労働が月80時間を超えた者を毎週抽出し、本人へ通知する | 人事総務 |
| 6 | 面接指導の申出窓口と実施医師を、9月分まで先に押さえる | 産業保健職 |
| 7 | 断水地域に居住する従業員を把握し、勤務時間に給水・入浴の移動時間を上乗せして評価する | 産業保健職 |
| 8 | 暑熱時の作業中断基準を、工期の圧力と切り離して文書化する | 事業者 |
| 9 | 発注案件について、工期短縮の要請が夜間・休日作業を生んでいないか点検する | 発注側総務 |
| 10 | 9月以降の要員計画を、入居時期(9月上旬〜10月中旬)から逆算して立てる | 経営層 |