この記事は、八代市に事業場や従業員の生活拠点を持つ人事総務・産業保健職に向けたものである。8月16日から、八代市の上水道区域では21時から翌6時まで給水が制限されている。断水戸数そのものは前日の約2万7,400戸から約1万戸へ減ったが、水が使えない時間帯が「終日」から「夜間」に置き換わった地域では、困りごとの中身が入れ替わる。夜勤者の手洗いとトイレ、寮の生活、翌朝の身支度、そして交代勤務そのものの時間割が対象になる。本日から数日のうちに決めておくべき点を整理する。
8月17日7時時点で確定していること
国土交通省第42報(8月16日10時時点)では、熊本県3自治体で約1万戸が断水しており、内訳は八代市4,450戸、宇城市4,098戸、氷川町1,487戸である。8月末の断水解消を目途に応急復旧が進むとされている。
これとは別に、八代市は8月16日19時50分更新の発表で、配水池の水位低下に伴い21時から翌6時まで上水道区域の給水を制限している。対象は旧八代市のうち日奈久・郡築・昭和の各校区を除く区域で、代陽・八代・太田郷・松高・八千把・宮地の各校区などが含まれる。日中に出る水は飲用可であり、「水質が悪い」のではなく「夜間は量と圧力が確保できない」という制限である。龍峯校区では漏水箇所を確認するため段階的な試験通水が続いている。応急給水は市内28か所で8時30分から19時まで、1回10リットル程度の配布である(8月17日7時30分更新)。
つまり、給水拠点が開いている時間と、水道から水が出る時間はほぼ同じであり、どちらも夜間には使えない。夜の生活用水は、日中のうちに汲み置くか、あらかじめ備えておくしかない。
記事030・記事049との違いを押さえる
記事030は、終日断水が3週間続くと決まった地域で、水を汲みに行く時間を勤務のどこに置くかを扱った。記事049は、通水したが漏水調査中で使ってよいとは言われていない状態を扱った。今回の局面は、そのどちらとも違う。水は出るし、飲んでよい。ただし夜9時に止まる。
この違いは実務上大きい。終日断水なら「水を運ぶ」計画を立てればよかった。通水後の使用自粛なら「使わない」で済んだ。夜間制限では、日中の勤務時間内に翌朝までの水を確保させる段取りが必要になり、しかもそれは夜勤者と日勤者で必要量も時間帯も違う。加えて、貯水槽を持つ建物と直結給水の建物で影響の出方が分かれる。貯水槽方式なら夜間も槽内の水で持ちこたえられるが、夜間に補給が入らないため、朝の使用ピークで先に枯れることがある。直結増圧方式では夜間の水圧低下がそのまま上階のトイレや給湯器に出る。
夜勤帯に具体的に何が起きるか
事業場の夜勤帯で最初に問題になるのはトイレである。洗浄水は1回あたり6リットルから8リットル程度を要し、夜勤者10人が一晩で使う量は簡単に100リットルを超える。次に手指衛生で、食品を扱う工程や食堂がある事業場では、アルコールでの代替が使えない場面が残る。避難所由来の感染症が職場に持ち込まれる局面では流水での手洗いが要るため(記事011)、夜間帯にどこか1か所は流水を確保する判断が必要になる。
生活面では、寮や社宅に住む単身の従業員と外国人労働者が影響を受けやすい。夜勤明けの入浴と洗濯が21時以降にずれ込む生活パターンだと、そのまま行き場を失う。日本語で流れる制限の通知が届いていない可能性もある(記事017)。制限の対象校区と時間帯は、母語または平易な日本語で個別に伝えたい。
製造工程では、洗浄・冷却・ボイラー補給水などの用途が夜間に止まる。日中に水を使う工程を寄せ、夜間は水を使わない工程だけを残す組み替えができるかを、生産部門と一緒に確認する段階である。
事業場側で今日決めておく7点
第一に、21時前の汲み置きを誰の業務として、どの時間に行うかを決める。業務命令として汲み置きや給水拠点への移動をさせるなら労働時間であり、割増賃金の対象になりうる。第二に、汲み置きの水は常温で長く置かないことを前提に、飲用と雑用水の容器を分ける。第三に、夜勤帯のトイレを1系統に絞り、その系統だけ確実に水を確保する。第四に、夜勤者の飲料水を1人1晩1.5リットル程度を目安にペットボトルで支給する。第五に、貯水槽方式の建物では夜間に補給が入らないことを踏まえ、朝の使用ピーク前の水位を毎日確認する。第六に、寮・社宅にはポリタンクを貸与し、置き場所と補水の担当を決める。第七に、夜勤の始業時刻を19時台へ前倒しするなど、シフト境界を給水制限の境界からずらせるかを検討する。
労務管理として整理しておくこと
シフトの時刻を動かす場合は、就業規則の始業終業時刻、変形労働時間制の枠、36協定の範囲を確認する。交代制の時間帯を変えると深夜割増の対象時間が変わるため、賃金計算の側も同時に見ておく必要がある。判断に迷う点は所轄の労働基準監督署または社会保険労務士に確認したい。
もう一つ重要なのは、「水が出ないから夜勤に入れない」という申告を受け取れる形にしておくことである。発災3週目に入り、不調や困りごとが申告されにくくなる時期に重なっている(記事036)。「夜勤の水の件で困っている人はいるか」と用途を限定して聞くほうが、「体調はどうか」と聞くより実態が出やすい。
「8月末解消」が意味しないこと
8月末という目途は断水戸数の解消についてのものであり、夜間給水制限の解除時期は本日7時時点で示されていない。配水池の水位が回復するまで制限が続く構造であるため、断水戸数がゼロになった日に制限が終わるとは限らない。事業場の計画は、9月上旬までは夜間制限が残りうる前提で組み、解除の発表が出た時点で緩めるほうが手戻りが少ない。応急仮設住宅の入居が9月上旬から10月中旬に始まることも踏まえると、従業員の居住地が動く時期と制限が重なる可能性がある(記事041)。
実務でそのまま使えるチェックリスト
| 区分 | 確認項目 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 対象把握 | 自社の事業場・寮・社宅が制限対象校区に入るか | 八代市の発表で校区名を確認。日奈久・郡築・昭和は対象外 |
| 建物設備 | 受水槽方式か直結増圧方式か | 直結は夜間の水圧低下が直撃。受水槽は朝のピーク前水位を毎日確認 |
| トイレ | 夜勤帯に確実に流せる系統を1つ決めたか | 洗浄1回6〜8リットルを目安に必要量を算出 |
| 手指衛生 | 流水での手洗いが必要な工程を洗い出したか | 食品・食堂・感染症疑いへの対応は流水が必要 |
| 飲料水 | 夜勤者への配布量を決めたか | 1人1晩1.5リットル程度を目安に支給 |
| 汲み置き | 誰が・いつ・どこで汲むかを決めたか | 業務命令なら労働時間。飲用と雑用水の容器を分ける |
| 工程 | 水を使う工程を日中に寄せられるか | 洗浄・冷却・補給水の時間帯を生産部門と調整 |
| シフト | 始業終業時刻を制限時間帯からずらせるか | 就業規則・36協定・深夜割増を同時に確認 |
| 寮・社宅 | ポリタンクの貸与と置き場所を決めたか | 単身者・外国人労働者への個別連絡を優先 |
| 情報伝達 | 制限の対象と時間帯を全員に伝えたか | 母語または平易な日本語で。掲示だけに頼らない |
| 申告経路 | 夜勤の水に関する困りごとを聞く窓口があるか | 用途を限定して具体的に尋ねる |
| 解除後 | 制限解除の発表を誰が確認するか | 八代市の発表を毎朝確認する担当を決める |