断水は国土交通省第47報(8月21日10時現在)で県内3市町の約4,300戸まで減った。最大約10万8,100戸だったことを思えば、8月末の解消という目標は現実味を帯びている。ただし事業場にとって重要なのは、水が出る日そのものよりも、その前後で給水支援が細くなっていく過程である。給水車は現在も計129台が入っているが、これは断水戸数に応じて配置されている資源であり、戸数が減れば必ず縮小する。この記事は、断水解消の宣言に向かう今週から、事業場と従業員がどの順で水を自前に切り替えるかを整理する。特に、8月21日に国が支援の方針を示した個人の井戸の扱いを、産業保健と人事総務の視点から取り上げる。
いま起きていること
宇城市2,579戸、八代市1,021戸、氷川町684戸。3市町とも管路の破損が原因で、現在は試験通水の段階にある。給水車の内訳は国土交通省18台、日本水道協会103台、自衛隊8台で、八代市・八代生活環境事務組合・宇城市を中心に運用されている。
前日の約4,900戸から約600戸減ったが、減り方は日々一定ではない。宇城市は8月20日から21日にかけて2,910戸から2,579戸へ、氷川町は961戸から684戸へ減り、八代市の1,021戸は動いていない。同じ会社の中でも、通水した事業場と残っている事業場が併存する状態が続いている(記事046)。
「断水解消」と「給水支援の終了」は同じ日ではない
ここを混同すると、事業場の水の計画が1週間ずれる。順序としてはおおむね次のようになる。
第一に、配水管への通水が完了する。これが「断水解消」として発表される段階である。第二に、各戸の宅内配管・貯水槽で漏水や濁りがないかを確認する期間が続く。この時期は水が出ても飲用や食堂での使用に制限がかかることがあり、8月16日時点で通水済みの約1万6,500戸が漏水調査のため使用自粛となった経緯がある(記事049)。第三に、給水車が段階的に引き上げる。
つまり、給水支援が最も細くなるのは「解消宣言の直後」であって、断水が最もひどい時期ではない。宣言が出た日に給水所へ行ったら台数が減っていた、という事態を織り込んでおく必要がある。断水が長期化する前提での事業継続は記事023、通水後の設備の再稼働は記事027にまとめている。
水道が戻っても、井戸は戻らない
見落とされやすいのが井戸である。熊本県は地下水利用が多く、被災3市町にも飲用の井戸を使う世帯や事業場がある。井戸はポンプの損傷や地下水位・水質の変化で使えなくなることがあり、この復旧は水道事業者の応急復旧の対象外である。水道が戻ったという報道を聞いても、井戸利用世帯の水は戻らない。
報道によれば、8月21日、飲用水として使われている個人の井戸の復旧について、費用の一部を国が負担する災害救助費などを通じて支援する方針が示された。その前日の8月20日夕方には、八代市長が防災担当大臣に対し、飲用水・生活用水として使われている井戸の修理を住宅の応急修理の対象に含めるよう要望したと報じられている。本日7時時点で対象範囲・申請方法・上限額といった制度の詳細は公表されておらず、市町村の窓口に問い合わせても回答が定まらない可能性が高い。したがって今週の実務は「制度を使う」ではなく「対象になりうる従業員を把握しておく」である。
事業場側の井戸も同じ構図にある。事業用の井戸は個人の井戸と支援の枠組みが異なりうるため、公的支援の一覧(記事020)を根拠に自己判断せず、所管の窓口に確認したい。
事業場の「水の自立」を、量で決める
給水支援が細くなる前提で、必要量を数字にしておく。目安は次のとおりである。
飲用は、屋外・高所作業を含む事業場で1人1日あたり3リットル以上を見込む。事務作業中心でも1.5リットルは要る。熱中症警戒アラートが8月22日を対象に熊本県を含む18県へ発表され4日連続となった状況では、上限側で積む。
トイレの洗浄は1回あたり6〜8リットル、1人1日5回として30〜40リットル。手洗いを含めれば、飲用より桁が一つ大きい。断水下の事業場運営の実務は記事010に整理している。
食堂を再開するかどうかは、水質確認が済むまで判断を保留するのが安全である。貯水槽を経由する系統は、通水後に洗浄・水質検査を経なければ飲用に使えない。冷却塔を持つ事業場では、停止期間が長かった系統のレジオネラ対策を再稼働の手順に入れる(記事027)。
従業員側の切り替えを、勤務時間の設計に落とす
給水車が減れば、給水所は遠くなり、待ち時間は伸びる。これまで勤務時間の中に確保してきた給水のための時間(記事030、夜間給水制限については記事051)を、いつ縮小するかを一律に決めない。自宅が通水したかどうかは町丁単位で異なり、同じ事業場の中で数日から1週間の差が出る。
在宅避難者は特に注意が要る。避難所にいれば給水は支援側が担うが、自宅では本人が運ぶ。避難指示が県内すべてで解除された今、自宅で断水を抱えたまま出勤している従業員の把握が前提になる(記事059)。
実務でそのまま使えるチェックリスト
| # | 決めること・確認すること | 誰が | 期限の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 事業場ごとに、水源が水道か井戸か(併用か)を台帳で確認する | 設備担当 | 今週中 |
| 2 | 井戸を使う事業場・従業員宅を洗い出し、ポンプ・水質の被害の有無を記録する | 設備担当/人事総務 | 今週中 |
| 3 | 井戸復旧の支援制度は詳細未公表であることを前提に、問い合わせ先(市町村の担当課)だけ先に確認しておく | 人事総務 | 制度公表まで待たない |
| 4 | 飲用水の必要量を「作業区分×人数×日数」で算定し、7日分を目標に備蓄量を決める | 安全担当 | 8月末まで |
| 5 | トイレ・手洗い用水の確保手段(貯水槽・仮設・受水)を、給水車撤収後の前提で組み直す | 設備担当 | 8月末まで |
| 6 | 貯水槽経由の系統について、洗浄・水質検査の業者手配を事前に押さえる | 設備担当 | 通水前に予約 |
| 7 | 食堂・給湯・製氷機の再開条件を、水質確認の完了と紐づけて文書化する | 衛生管理者 | 通水前 |
| 8 | 冷却塔・空調系の再稼働手順にレジオネラ対策を組み込む | 設備担当 | 通水前 |
| 9 | 給水のための勤務時間の配慮を、いつ・誰から縮小するかを個別判断とし、一律終了にしないことを明文化する | 人事総務 | 解消宣言前 |
| 10 | 従業員の自宅の通水状況を、宣言後も1週間は継続して確認する | 人事総務 | 宣言後1週間 |