8月28日に宇城市と氷川町が断水解消を発表し、熊本県内の上水道の断水は解消したと報じられた。だが同じ8月28日、宇城市は不知火町・松橋町・小川町・豊野町で減圧給水を続けていること、そして小川防災拠点センターの給水車と仮設給水タンクを8月31日(月)で終えることを告知している。断水戸数はゼロになったが、水圧は戻りきっていない。この記事は、宇城市・氷川町・八代市に事業場を持つ人事総務と施設管理者、そして事業場再開の可否を問われる産業保健職に向けて、9月1日の始業前までに何を測り、何を決めておくかを整理する。
「断水ゼロ」と「水が使える」の距離
断水戸数という指標は、配水管から各戸への給水が再開されたかどうかを数えている。蛇口から必要な量が出るかは別の問題である。この差は今回の復旧過程で三度現れた。通水したが漏水調査中で使用を控えるよう求められた段階(記事049)、夜間に給水を止める時間帯制限(記事051)、そして今回の減圧給水である。いずれも「断水中ではない」ため統計上は復旧側に数えられるが、事業場から見れば水の使い方を変えざるをえない状態が続いている。
減圧給水は、配水池の水位を保ちながら漏水量を抑えるために送水圧を下げる措置である。給水管の末端、高い階、地形的に高い区画から順に出が悪くなる。同じ敷地でも、1階の給湯室は使えるのに3階のトイレは流れない、という形で不均一に現れる。市の発表が「町単位」であることに注意したい。町全体が均一に減圧されているのではなく、その町の中で条件の悪い場所に影響が集中する。
8月31日で止まるもの、9月も続くもの
宇城市の告知を日付で読み直すと、次のように分かれる。給水車による飲料水の応急給水(8時30分〜17時、1人1日4リットル以内)は8月31日まで。24時間利用できた仮設給水タンクも8月31日まで。一方、減圧給水は終期が示されていない。三角町は8月10日に通常水圧に戻っており、地区ごとに順次解除される見通しだが、9月1日時点でどの町が戻っているかは現時点で確定していない。
つまり9月1日は、補いの手段が消える日でありながら、補うべき状態が残りうる日である。記事077で整理したとおり、給水・入浴・洗濯の支援は通水の順番とは違う順番で閉じていく。記事079で扱った備蓄水と借用タンクの返却時期を、8月31日で機械的に区切ってしまうと、9月第1週に自前の水を持たない事業場ができる。返却の判断は、市の給水終了日ではなく自社の蛇口の実測値に合わせるべきである。
減圧下で事業場のどこが先に詰まるか
受水槽方式の建物では、減圧の影響は「入ってくる量」に出る。受水槽のボールタップは低圧でも開くが、補給の速度が落ちるため、朝の使用集中で水位が下がったまま回復しない。高置水槽への揚水ポンプは、受水槽が渇水位で停止し、渇水位警報が鳴る。直結増圧方式の建物では、増圧ポンプが吸込側の圧力低下で停止することがある。いずれもポンプの空転や頻繁な発停につながるため、記事027で扱った復旧時の設備再起動の注意が、そのまま9月にも当てはまる。
用途別には次の順で影響が出る。フラッシュバルブ式の大便器は瞬間流量が大きく、減圧下では洗浄不良を起こしやすい。次に食堂の連続給湯と食器洗浄機、シャワー、そして冷却塔の補給水である。冷却塔は補給が追いつかないと濃縮が進み、レジオネラのリスクが上がる。猛暑が続くこの時期に空調を止められない事業場では、補給水の実測と水質管理をこの週のうちに確認しておきたい(記事010、記事023)。
9月1日の始業前、30分で測れること
必要なのは特別な機器ではない。第一に、受水槽の水位を始業前と昼と終業前の3回記録する。第二に、最上階の最も遠い蛇口を全開にし、バケツ1杯(10リットル)が満たされる秒数を測る。目安として60秒を超えるようなら、その系統の一斉使用は成り立たない。第三に、大便器を1台流し、次の洗浄までの回復時間を見る。第四に、給湯器とシャワーが低圧で着火・作動するかを確認する。数字が悪ければ、始業時刻をずらす、休憩時間を分散させる、当日は食堂を弁当対応に切り替える、といった手が打てる。
測った値は、その日の判断だけでなく記録として残す。9月の衛生委員会で、減圧給水下の勤務条件をどう扱ったかを説明する材料になる(記事066)。
従業員個人の側で起きていること
事業場が正常でも、従業員の自宅が同じとは限らない。宅内配管の損傷で本管復旧後も水が届かない事例があり、国土交通省は相談窓口(0120-275-557)を案内している。井戸利用世帯には未復旧が残り、国が復旧支援を続けるとされている。ここは記事083で整理したとおり、地域単位の「解消済み」ではなく人単位での確認が必要な領域である。断水解消が報じられた翌週は、本人から言い出しにくくなる時期でもある。上司からの一言を、月曜の朝礼で一度入れておきたい。
実務でそのまま使えるチェックリスト
| 確認項目 | 期限 | 担当 | 判断の基準 |
|---|---|---|---|
| 自社所在地が減圧給水の対象町か(不知火・松橋・小川・豊野)を市の告知で確認 | 8月31日まで | 施設 | 対象なら以下をすべて実施 |
| 受水槽水位を始業前・昼・終業前に記録 | 9月1日から1週間 | 施設 | 昼に渇水位付近なら使用時間を分散 |
| 最上階・最遠の蛇口で10リットル充填時間を測定 | 9月1日始業前 | 施設 | 60秒超で一斉使用を中止 |
| 揚水・増圧ポンプの発停回数と警報履歴を確認 | 9月1日始業前 | 施設 | 空転・頻繁発停なら手動運用へ |
| 冷却塔の補給水量と水質を確認 | 8月31日まで | 施設・産業保健 | 補給不足なら濃縮管理を強化 |
| 備蓄水・借用タンクの返却日を再設定 | 8月31日まで | 総務 | 市の給水終了日ではなく実測値で判断 |
| トイレ・食堂・シャワーの当日運用(弁当対応、時差利用)を決定 | 8月31日まで | 総務 | 洗浄不良が出た系統は使用制限 |
| 自宅の水(宅内配管・井戸)で困っている人の有無を個別に確認 | 9月第1週 | 上司・産業保健 | 相談窓口0120-275-557を案内 |
| 減圧給水下の対応記録を衛生委員会資料に反映 | 9月の委員会 | 産業保健 | 9月以降の本運用に接続 |