発災から1週間が経った8月4日の時点で、被災地の事業場の人事総務・産業保健職、そして応援を出している被災地外の本社に向けた記事である。10日ほど先にお盆が来る。今回の地震では、応急仮設住宅の着工、応急危険度判定の完了目標、都市ガス南部区域の復旧見通しといった主要な工程がいずれも8月中旬前後に集中している。同じ時期に、復旧の中心にいる人たちの休暇と帰省が重なる。この重なりを事前に設計しておかないと、最も人手が要る局面で最も人が薄くなる。本記事は、その2週間の人員計画を今週のうちに立てるための材料である。
なぜ今週のうちに決める必要があるのか
8月3日の熊本県災害対策本部会議で示された工程を並べると、8月上旬に集中していることがわかる。応急危険度判定は8月4日から3班体制に拡充し、県立学校24校と14市町村148施設について8月上旬を目途に完了する見込みとされた。建設型応急仮設住宅は8月3日に宇城市・氷川町の計4か所で着工した。八代市の都市ガスは南部区域約5,900戸が少なくとも1〜2週間程度を要する見通しで、これはお盆の入りとほぼ重なる。県営住宅29戸の無償提供は8月6日から申込受付が始まり、ホテル・旅館への2次避難は8月3日に受付が始まったばかりである。
つまり、避難所から次の住まいへ移る手続きと、事業場の建物の可否判断と、ライフラインの最終的な復旧が、いずれもお盆前後に山を迎える。ここに帰省の予定が重なる。予定を出させるだけでは足りず、誰が動けて誰が動けないのかを人ではなく機能で把握する必要がある。
決めておく3つのこと
第一に、止められない機能を洗い出す。 施設・設備の当番、安否と居所の確認、給水や物資の受け取り、行政手続きへの対応、産業保健の相談窓口。このうち「1日空いても翌日に取り返せるもの」と「その日にいないと困るもの」を分ける。後者だけを対象に、日ごとの担当を決める。全部を対象にすると計画が破綻する。
第二に、外部の応援がいつまでかを確認する。 今回、モバイルファーマシーは宮崎県薬剤師会が8月1日から7日までの派遣予定と公表しており、他県薬剤師会も期間を区切って入っている。DMAT・DPAT・災害支援ナース等も交替制である。自衛隊の給水・入浴支援も同様に、いずれ縮小する。事業場が「今できていること」の一部が外部支援に支えられている場合、支援の終期が自社の計画の前提になる。入浴支援が続いている地域では、それが終わったあとの従業員の入浴手段を先に考えておく。
第三に、休む人を決める。 発災から1週間、休めていない人が必ずいる。記事018で扱ったように、経営者や小規模事業場の管理者ほど休まない。お盆は、休むことに社会的な説明が要らない数少ない時期である。この時期に意識的に休みを割り当てないと、9月以降に体調を崩す人が出る。記事007の惨事ストレスの観点からも、支援側・復旧側にいる人の連続勤務日数を今週のうちに数えておきたい。
帰省をめぐる三つの立場
今回の被災地では、帰省の意味が人によって大きく異なる。整理しておくと運用が楽になる。
被災地で働き、被災地に住む従業員。帰省先が被災地外であれば、涼しい場所で休めることに大きな回復効果がある。断水地域に住む人にとっては、数日間まともに入浴し洗濯できること自体が健康上の利益になる。逆に、住まいの片付けや罹災証明の手続きが残っていて帰省できない人もいる。ここで「帰れる人」と「帰れない人」の差が生まれる。差そのものは埋められないが、帰れない人の側に手続きのための時間を配分することはできる。記事022で扱った窓口対応の時間確保は、お盆期間中の市町村窓口の開設状況とあわせて再確認したい。
被災地外に住み、被災地へ応援に入っている従業員。この人たちの帰省は、応援体制の穴に直結する。交替要員の確保とセットで考える。往復の移動も、九州新幹線が熊本〜鹿児島中央で運転を見合わせ、九州自動車道が松橋IC〜えびのICで通行止めという状況では、平時の所要時間で計算できない。移動日を勤務日として扱うのか、いつ出発するのかを事前に決めておく。
被災地に家族がいて、被災地外で働いている従業員。お盆に帰省して初めて実家の被害の全容を見る人がいる。帰省から戻ったあとに気持ちが動く可能性を、管理職が知っておくとよい。記事009で扱った「自分はまだマシだ」の構造は、この立場の人に強く出やすい。
産業保健職が今週やっておくこと
連続勤務日数の把握が最も費用対効果が高い。8月4日時点で、発災以来何日連続で勤務している人がいるかを人事から出してもらう。7日を超えている人がいれば、お盆前に必ず1日以上の休みを入れる調整を提案する。次に、お盆期間中の相談窓口の運用を決める。誰も出勤しない期間があるなら、その間の連絡先を明示しておく。産業保健職自身が不在になる期間があれば、代替の連絡経路を掲示する。
そして、9月の見通しを持っておきたい。記事015で示したとおり、災害後のメンタルヘルスは1か月後・3か月後に節目が来る。お盆明けはちょうど発災3週間で、当面の対応が一段落し、疲労と現実の重さが同時に出てくる時期にあたる。その時期に何を見るかを、忙しくなる前の今週のうちに決めておく。
実務でそのまま使えるチェックリスト
| 項目 | 確認内容 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| 機能の棚卸 | 「その日にいないと困る機能」を列挙した | 8月7日まで |
| 当番表 | 上記機能について8月8日〜17日の日別担当を決めた | 8月7日まで |
| 外部支援の終期 | モバイルファーマシー・入浴支援・給水等の継続予定を確認した | 8月7日まで |
| 連続勤務 | 発災以来の連続勤務日数を全員分把握した | 今週中 |
| 休暇の割当 | 連続7日超の従業員にお盆前の休みを割り当てた | 今週中 |
| 帰省の把握 | 帰省予定・帰省不可の別を、理由を問わずに把握した | 8月7日まで |
| 手続き時間 | 帰省しない従業員に罹災証明等の手続き時間を配分した | 8月7日まで |
| 窓口の開設 | 市町村窓口のお盆期間中の開設状況を確認し周知した | 8月10日まで |
| 移動の設計 | 応援要員の往復について移動日の扱いを決めた | 8月7日まで |
| 相談窓口 | お盆期間中の健康相談の連絡先を掲示した | 8月10日まで |
| 復帰後の設計 | お盆明けに何を見るかを決めた | 8月14日まで |
| 記録 | 上記の判断と実施日を記録に残した | 随時 |
この表は、被災地の事業場と、応援を出している本社の双方で使える。本社側は記事008の判断の流れとあわせて確認したい。