089_学校が9月1日にそろって戻る — 時差出勤と短時間勤務を、家庭ごとに解除する順番

この記事は、被災地の人事総務と産業保健職、そして育児を抱える従業員を部下に持つ管理職に向けたものである。熊本県内の学校は、8月24日から始まった地域、8月末に始まった地域、そして震度7を観測した宇城市のように8月31日に再開した地域と、二週間近くずれながら戻ってきた。文部科学省は8月21日、すべての学校で9月1日までに新学期の教育活動を開始する予定と説明しており、本日でその目標日を迎える。

学校が戻れば、7月28日以降に緊急避難的に組んだ時差出勤・短時間勤務・在宅勤務・特別休暇を、いつまで続けるのかという問いが必ず出てくる。ここで一律に「9月1日で終了」としてしまうと、まだ戻れない家庭だけが取り残される。逆に期限を決めないままにすると、運用が形骸化し、誰がどの措置を使っているのか人事も把握できなくなる。本日決めるべきは、終了日ではなく、解除の順番である。

目次

「学校が再開した」と「毎日、いつもの時間に通える」は別のこと

再開の発表は、校舎で授業が始まったことを意味する。従業員の生活時間が元に戻ることを意味しない。今の熊本では、少なくとも次の条件が家庭ごとにばらついている。

第一に、居場所である。避難所や親族宅、応急住宅から通う子どもがいる。県が整備した応急住宅は21団地553戸が着工し、氷川町で20戸が完成した段階で、入居はこれから9月にかけて進む。入居が決まった家庭は、決まった日から通学経路が変わり、送迎の時間も変わる。避難所に残る家庭は、8月28日時点で県内61か所・2,442人という発表の中にいる。

第二に、通学路である。公費解体や応急修理が本格化し、大型車両の出入りが増えた道を子どもが歩く。通行止めが残る区間では、迂回や送迎が必要になる。

第三に、学校側の運用である。校舎の一部が使えない、給食が通常提供に戻っていない、部活動や放課後の活動が再開していない、といった状態では、下校時刻が普段より早い。午後の勤務が組めない家庭が出る。

第四に、水である。宇城市の不知火町・松橋町・小川町・豊野町では減圧給水が続き、松橋町と小川町は8月27日からさらに減圧されて日中も水が出にくい。応急給水は8月31日で終了した。洗濯と入浴の時間が読めない家庭では、朝の支度に要する時間がまだ元に戻っていない。

これらは本人に聞かなければ分からない。人事が持っている情報は住所と通勤経路だけで、子どもがどこから通っているかまでは分からないからである。詳しくは記事016記事052に整理している。

解除は「制度ごと」ではなく「家庭ごと」に

実務でやりやすいのは、制度単位で終了日を決めることである。「特別休暇は8月末まで」「時差出勤は9月末まで」といった決め方は、通知が一本で済む。しかし今回のように再開日が地域で二週間ずれた災害では、制度単位の一律終了は、最後に再開した地域の従業員にだけ不利に働く。

代わりに、次の順番で戻すことを勧めたい。

  1. 学校が再開し、通学路も給食も通常に戻り、家庭に他の制約がない人 — 通常勤務に戻す。ここが最も多いはずである。
  2. 学校は再開したが、下校が早い・部活動が止まっている人 — 時差出勤か短時間勤務を、期間を区切って継続する。学校側の見通し(給食の通常提供、放課後活動の再開)を目安に日付を置く。
  3. 避難所・応急住宅・親族宅から通っている人 — 住まいが定まるまで継続する。応急住宅の入居が決まった時点で、通勤経路の届出と合わせて勤務も組み直す。記事076記事082を参照されたい。
  4. 減圧給水地域に住む人 — 水の状況が変わるまで、朝の始業時刻に幅を残す。

この4段階を、対象者一覧の1列として持つ。誰がどの段階にいるかが分かれば、「いつまで続けるのか」という問いに個別に答えられる。

解除するときに、必ずセットで伝える3つのこと

勤務条件を戻すときの伝え方で、その後の申告の出方が変わる。

戻すのは条件であって、支援ではないこと。 通常勤務に戻ったあとも、子どもの体調不良や学校からの呼び出しには、子の看護等休暇や時間単位の年次有給休暇で対応できる。戻したとたんに「もう相談できない」と受け取られると、無理をして出勤し、後で崩れる。

再申請ができること。 一度通常勤務に戻した人が、余震・台風・子どもの不調で再び配慮が必要になることは十分にある。気象庁は8月18日から1~2か月程度、最大震度5弱程度以上の地震に注意が必要としており、この期間は9月中旬から下旬まで続く。再申請の窓口と様式を、解除の通知に併記しておく。

心のケアの窓口が学校側にもできたこと。 文部科学省は、スクールカウンセラーの追加配置に向けて日本臨床心理士会へ派遣協力を要請したと説明している。子どもの様子が気になる従業員に対して、職場が抱え込まずに学校の窓口を案内できる。職域側の相談先については記事080にまとめている。

9月の面談で拾いたいこと

この1か月、育児を抱える従業員は、自分の生活再建と子どもの世話を同時に回してきた。学校が戻ることは負担の軽減であると同時に、行事・提出物・持ち物といった日常のタスクが戻ることでもある。9月の面談では、次の3点を具体的に聞きたい。

  • 朝、家を出るまでに何時間かかっているか(水・送迎・支度の実際の所要時間)
  • 子どもの就寝時刻と、本人の睡眠時間
  • 学校からの連絡に、勤務中どう対応しているか

一般的な「困っていることはありますか」では出てこない。所要時間と睡眠時間という数字で聞くと、本人も気づいていない負荷が見える。発災1か月を過ぎた時期の不調の拾い方は記事015、健診結果の読み方は記事088に整理している。

実務でそのまま使えるチェックリスト

#今週やること担当期限の目安
1育児・介護を理由に配慮措置を使っている従業員の一覧を出す人事総務本日
2各人を上記4段階のどこに置くか、本人に確認する(住まい・通学路・下校時刻・水)管理職今週中
3段階1の人に、通常勤務への復帰日を個別に通知する人事総務今週中
4段階2~4の人に、継続する措置と次の見直し日を通知する人事総務今週中
5通知に「子の看護等休暇・時間単位年休が引き続き使えること」を明記する人事総務通知と同時
6再申請の窓口・様式・所要日数を通知に併記する人事総務通知と同時
7応急住宅の入居が決まった人は、通勤経路の届出と勤務をあわせて組み直す人事総務入居決定の都度
89月の面談項目に「朝の所要時間」「子どもの就寝時刻」「本人の睡眠時間」を加える産業保健職9月面談まで
9スクールカウンセラーの追加配置など、学校側の相談窓口を管理職に周知する産業保健職今週中
10余震・台風で再度配慮が必要になった場合の連絡経路を、管理職に確認する人事総務今週中

参考

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