熊本県の資料では、罹災証明書の一次調査は32市町村が8月中、8市町が9月上旬までに完了する見込みとされている(8月28日の災害対策本部会議資料)。申請6万362件に対して交付は2万2,641件(8月24日時点、交付率37.5%)であり、9月は「判定が手元に届く月」になる。届いた判定に納得できない人が次に行うのが二次調査(再調査)の申請である。この記事は、人事総務と産業保健職が、その申請を従業員の勤務時間の中でどう成立させるかを整理する。窓口が9月から縮む自治体があり、放置すると欠勤や有給の突発取得が積み上がる。
一次調査と二次調査は、何が違うのか
一次調査は原則として外観の目視による被害認定である。短期間で大量の判定を出すための方法であり、外から見えない被害は反映されにくい。これに対して二次調査は、申請に基づいて内部を含めた詳細な調査を行うものである。熊本市は「すでに一次調査結果のり災証明書を受け取った方で、判定結果に不服がある場合は二次調査(再調査)を申請することができる」と案内している。宇城市は8月20日から本庁新館で二次調査の受付を始めており、受付時間は9時から16時(12時から13時を除く)である。
ここで実務上の落とし穴が一つある。宇城市の案内では、二次調査の申請に罹災証明書の原本と本人確認書類が必要であり、代理申請には委任状が要る。罹災証明書の原本は、社内の見舞金申請や住宅手当の変更、取引先への提出などで会社が預かっていることがある。原本を会社が持ったままだと、従業員は窓口で手続きができない。9月に入る前に、預かっている原本を返却するか、写しで足りる社内手続きに切り替えておきたい。
窓口が9月から縮む
宇城市は、罹災証明の受付会場について、9月から三角支所と豊野支所を平日のみとし、休日の開庁は本庁新館と小川ラポートの2会場に絞ると案内している(8月28日更新)。熊本市の各区福祉課・総合出張所も、平日の9時から16時が基本である。
つまり9月は、判定が届く人が増える一方で、平日日中に行くしかない人の割合が増える。これは通勤時間が延びたままの地域と重なる。鹿児島本線の宇土〜八代は代行バス運行が10月中旬頃まで続く見込みで、往復の移動時間そのものが8月より長い従業員がいる。窓口の縮小と移動時間の増加が同時に効くため、「午後半休で行ける」という前提が崩れている事業場がある。
さらに、二次調査は申請してすぐ結果が出るものではない。内部を含む調査の日程調整が入り、立会いを求められる場合がある。つまり従業員は、申請に一回、調査の立会いに一回、結果の受取にもう一回、窓口や自宅に時間を空ける可能性がある。休暇の設計は「一日あれば終わる」ではなく「9月中に三回分」と見ておくほうが実態に近い。
判定が変わると、何の入口が変わるのか
二次調査は、金額を争う手続きではなく、被害区分を確定させる手続きである。区分が変われば、そこから先に開く制度の入口が変わる。応急修理、公費解体、被災者生活再建支援金、税・保険料の減免、賃貸型応急住宅の対象など、判断の起点はいずれも罹災証明書の被害区分である。制度の中身は記事020に整理しているので、ここでは職場が押さえるべき二点だけ挙げる。
一つは、公費解体の受付が自治体ごとにばらついていることである。熊本県の8月28日の資料では、受付窓口を開設しているのは甲佐町とされ、宇城市は8月25日時点で「準備中」と案内している。判定が確定してから受付が始まる自治体では、9月から10月にかけて手続きが二段構えになる。従業員の休暇希望も二回に分かれる。
もう一つは、自費で先に解体・修繕をした場合の償還である。宇城市は解体前・中・後の写真、契約書・見積書・領収書、廃棄物処理帳票の保存を求めている。記録がないと後から戻らない。記事075で触れた「壊す前に撮る」は、二次調査を申請する人にとっては、判定が確定するまで壊さない・捨てないという判断にもつながる。
職場が9月に用意しておくもの
判定は本人にしか届かない。会社が把握できるのは、本人が申し出たときだけである。9月の最初の週に、次の三つを揃えておきたい。
第一に、休暇の枠組みである。罹災証明の窓口対応を特別休暇の対象に含めているか、含めていないなら時間単位年休や中抜けで対応できるかを明示する。「必要なら休んでよい」ではなく、どの制度をどう使うかを名指しで示すほうが、申告が出る。
第二に、原本と写しの整理である。前述のとおり原本は本人の手元にある必要がある。社内提出は写しで足りるように運用を変え、すでに預かっているものは返却する。
第三に、申告の窓口を一本化することである。判定に不服があるかどうかは、本人が制度を知っていて初めて申し出になる。一次調査が外観目視であること、内部の被害は二次調査で見てもらえること、この二つを知らないまま「そういう判定なら仕方ない」と受け取っている人がいる。9月の朝礼や社内掲示で一度だけ事実を伝えるだけでも、申請の機会は開く。判定に納得できないという話は、上司には言いにくく、産業保健職には言う機会がない。人事総務の担当者名と連絡先を書いた一枚を配るだけで届き方が変わる。記事063では判定が確定していく局面の受け止め方を、記事022では罹災証明書の申請そのものを扱っている。あわせて読める形にしておくとよい。
実務でそのまま使えるチェックリスト
| 確認事項 | 今週中にやること |
|---|---|
| 罹災証明書の原本 | 会社が預かっているものを洗い出し、返却する。社内手続きは写しで可に変更 |
| 従業員の所在自治体 | 一次調査の完了見込み(8月中か9月上旬か)と、二次調査の受付窓口・時間を自治体ごとに一覧化 |
| 窓口の開庁日 | 9月からの平日限定化・休日会場の縮小を確認し、平日日中に行く前提で勤務を組む |
| 休暇制度 | 窓口対応に使える休暇を名指しで通知(特別休暇・時間単位年休・中抜けの可否) |
| 通勤時間 | 代行バス利用者は往復の所要時間を加味して半休では足りない場合を想定 |
| 解体・修繕の着手 | 二次調査を申請予定の従業員には、判定確定まで解体・撤去を急がないこと、写真と書類を残すことを伝える |
| 相談窓口 | 人事総務の担当者名・連絡先を明示した一枚を配布 |
判定は9月に出そろう。手続きの負荷が読める以上、突発の欠勤として処理するより、あらかじめ枠を用意しておくほうが職場にとっても軽い。