この記事は、熊本県内に従業員を抱える人事総務と、その事業場を担当する産業保健職に向けたものである。県内の学校再開は、八代地域が9月1日から、それ以外の地域が8月24日から9月1日の間に順次という見通しが示されている。つまり同じ会社の同じ職場でも、子どもの通学先によって復帰できる日が最大2週間ずれる。8月24日は来週月曜であり、判断の猶予は1週間しかない。子の預け先が戻らない期間をどう埋め、戻ったあとに何が残るかを整理する。
8月17日7時時点で示されていること
熊本県災害対策本部の各部報告資料(8月15日)では、学校再開の見通しとして八代地域が9月1日から、八代地域以外は8月24日から9月1日の間に順次開始とされている。学校の被害は355校(県立61校、市町村立294校)で、児童生徒85名・教職員7名の人的被害が確認されている。文部科学省は7月30日から応急危険度判定士を派遣し、8月上旬までに宇城市・八代市など14市町村での調査を進めた。八代市の龍峯小学校は校舎のひび割れとグラウンドの地割れで立ち入り禁止となり、7月31日時点で市教委が2学期の再開が難しい可能性を示していた。報道では、同校の2学期は宮地小学校の空き教室を使って再開する方向とされている。
一方、保育の側は学校と足並みが揃っていない。報道では、八代市の保育園が夕方までの預かりを再開したものの、断水のため調理ができない状態が伝えられている。八代市の上水道区域では8月16日から21時から翌6時までの給水制限が始まっており(記事051)、給食や調理の再開は水の回復と連動する。
「学校が始まる」と「子を預けられる」は同じではない
始業日が発表されると、職場では「では通常勤務に戻れる」と受け取られやすい。しかし実際に従業員の就業を左右するのは、始業日そのものではなく次の4つである。
第一に給食の有無である。給食が出ない期間は弁当の準備が必要になり、下校時刻も早まる。断水が続く地域では学校ごとに対応が分かれるため、自治体単位ではなく学校単位で確認するしかない。第二に登下校の手段である。通学路の被害や仮設校舎への移動によって、保護者の送迎が必要になる家庭が出る。送迎が発生すれば始業前と終業後の時間が固定される。第三に放課後児童クラブと学童の開所である。学校が始まっても学童が戻らなければ、下校から帰宅までの空白が残る。第四に保育所・こども園である。就学前の子がいる家庭は、学校の再開日とは無関係に影響を受け続ける。
この4点は、記事016で扱った「学校も保育所も止まっているとき」の続きにあたる。あのときは全部が止まっていた。今回は、止まっているものと戻ったものが混ざるため、従業員ごとに事情が違う。一律の措置では合わなくなる。
8月24日から9月1日の1週間を埋める手段
この期間に使える手段は、大きく4つに分けられる。
勤務時間を動かす手段としては、時差出勤、短時間勤務、テレワークがある。給食がなく下校が早い期間は、始業を早めて終業も早める形が実務上使いやすい。育児のための所定外労働の制限や短時間勤務は、育児・介護休業法に基づく制度であり、対象となる子の年齢要件があるため、小学生の子については社内制度としての対応が必要になる場合がある。
休暇を使う手段としては、年次有給休暇の時間単位付与、子の看護等休暇、災害を理由とする特別休暇がある。時間単位年休は労使協定が前提であり、未整備の事業場ではこの1週間には間に合わない。その場合は特別休暇や勤務時間の振替で対応するほうが早い。
場所を動かす手段としては、通勤困難な期間に自宅近くの他事業場を就業場所とする扱いがある。八代地域は鹿児島本線の宇土〜八代が運転見合わせで、バス代行輸送も8月26日からの実施に向けて調整中であり、通勤自体が制約を受けている(記事024、記事037)。
助成の手段としては、事業活動の縮小を伴う休業について雇用調整助成金等の相談窓口が熊本労働局に設けられている。制度の適用可否は個別判断であるため、使えるかどうかを含めて早めに相談したい。公的支援の全体像は記事020にまとめている。
9月1日以降に持ち越す論点
応急仮設住宅は整備決定222戸13団地、着工205戸12団地で、入居が9月上旬から10月中旬の見込みである。2学期の途中で転居が始まるため、通学先が変わる家庭が出る。転居に伴う通勤経路の変更は通勤災害の認定に関わるため、届出を実際の居住地と合わせておく必要がある(記事024)。2次避難のマッチングは8月15日時点で253件577人が成立し、500件が調整中で、ここでも居住地の移動が続く(記事041)。
もう一つは子ども側の健康である。学校が再開してから体調不良や登校しづらさが出てくることは珍しくない。保護者である従業員は、自分の不調より子の状態を先に心配し、自身の変化を申告しない傾向がある。発災3週目は緊張が切れる時期でもあり(記事036)、面談では「子どもは学校に行けているか」から入るほうが話が出やすい。中長期の見方は記事015を参照されたい。
今週のうちにやること
必要なのは、制度を整えることより先に、誰が何日から復帰できるかを一覧にすることである。従業員名簿に「子の在籍自治体」「学校名」「始業日」「給食の有無」「学童の開所」「保育所の開所」の6列を足せば、来週の要員計画はそのまま引ける。始業日は自治体の発表で確認できるが、給食と学童は学校・施設単位でしか分からないため、従業員本人から聞き取るのが早い。聞き方は「お子さんの学校はいつからですか」ではなく「何日から通常どおり預けられますか」がよい。前者は始業日を、後者は就業可能日を答えさせる質問である。
実務でそのまま使えるチェックリスト
| 区分 | 確認項目 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 対象把握 | 育児中の従業員をリスト化したか | 就学前・小学生・中学生で分けて把握 |
| 始業日 | 子の在籍自治体の始業日を確認したか | 八代地域は9月1日から、それ以外は8月24日から順次 |
| 給食 | 給食の有無と下校時刻を学校単位で確認したか | 断水地域は提供不可の可能性。弁当準備と早い下校を想定 |
| 学童 | 放課後児童クラブの開所状況を確認したか | 学校再開と同時に戻るとは限らない |
| 保育所 | 保育所・こども園の開所と給食を確認したか | 断水地域では調理不可の報道あり。預かり時間も要確認 |
| 登下校 | 保護者の送迎が必要な家庭を把握したか | 送迎があれば始業前後の時間が固定される |
| 勤務 | 時差出勤・短時間勤務・テレワークの可否を決めたか | 給食なし期間は始業も終業も前倒しが使いやすい |
| 休暇 | 時間単位年休の労使協定があるか | 未整備なら特別休暇か勤務時間の振替で対応 |
| 通勤 | 鉄道・バス代行の状況を織り込んだか | 宇土〜八代のバス代行は8月26日実施に向け調整中 |
| 助成 | 休業に助成金が使えるか相談したか | 熊本労働局に雇用調整助成金等の相談窓口 |
| 転居 | 9月以降の応急住宅入居予定を把握したか | 通学先と通勤経路の変更届を実際の居住地に合わせる |
| 健康観察 | 子の状況から入る面談ができているか | 保護者本人の不調は後から出る。9月中旬まで見る |