041_避難者が1日で約2,400人減った日 — 従業員の居場所と連絡先が入れ替わる週を、名簿と通勤の設計でどう受け止めるか

この記事は、被災地に従業員を抱える人事総務と産業保健職、および被災地外から従業員の状況を把握しようとしている本社に向けたものです。8月11日、県内の避難者は3,714人、避難所は89か所になりました。前日の同じ時点は6,108人・97か所です。1日で約2,400人が避難所から出たことになります。同時に建設型応急住宅が9団地159戸で着工し、賃貸型応急住宅の受付は15市町村に広がりました。従業員の「いまどこにいるか」が、今週まとめて書き換わります。それは職場から最も見えにくい変化です。連休をまたぐ前に、何を握り直しておくかを整理します。

目次

何が動いたのか — 数字で見る移動の規模

熊本県の発表(8月11日14時時点)では、避難所は11市町89か所、避難者3,714人。8月10日14時時点の12市町村97か所・6,108人から、1日で避難所が8か所、避難者が2,394人減りました。減少の内訳は公表されていません。避難所の統合で別の避難所へ移った人、親族宅やホテル等の2次避難へ移った人、自宅に戻った人が混在していると考えるのが妥当です。

受け皿の側も同じ週に動いています。建設型応急住宅は熊本市3団地50戸が8月10日、八代市2団地35戸が8月11日に着工し、宇城市3団地50戸、氷川町3団地62戸、美里町1団地12戸と合わせて9団地159戸となりました。賃貸型応急住宅(みなし仮設)の受付市町村は8月10日の13から8月11日には15に増えています。家賃上限は単身5.5万円、2人世帯6.5万円、3〜4人世帯9.5万円、5人以上世帯13万円です。

つまり今は、避難所から出る流れと、応急住宅へ入る流れが同時に立ち上がった時点です。両者は連続していません。避難所を出てから応急住宅に入るまでに、親族宅や車中泊や短期の賃貸を挟む人がいます。職場が「避難所にいるはずだ」という前提で連絡先を持っていると、この期間にまるごと途切れます。

職場から見えなくなる3つのもの

一つ目は連絡先です。避難所名や避難所の代表電話を緊急連絡先にしていた場合、その避難所が統合されると連絡がつかなくなります。本人の携帯番号を持っていても、充電環境が変わって応答が落ちることがあります。

二つ目は生活時間です。避難所にいる間は給水も食事も配給の時間に縛られていました(記事030)。応急住宅や親族宅に移ると、その拘束は外れる代わりに、買い出し・炊事・洗濯・入浴が自分の時間に戻ってきます。断水地域に移った場合はむしろ生活時間が伸びます。時差出勤や中抜けの許可を「避難所にいる人向け」として運用していた事業場は、対象者の判定基準が実態と合わなくなります。

三つ目は相談先です。避難所には保健師チーム、DMAT、JMAT、災害支援ナース、DWATなどが巡回しており、体調の異変が第三者の目に触れる機会がありました。8月11日時点で保健師等の派遣は県分で908人、避難所への災害支援ナース派遣は42人です。避難所を出た人はこの網から外れます。しかも支援チーム自体が縮小局面に入っています(記事039)。避難所の外に出た従業員にとって、体調の変化に気づく相手は職場だけになりかねません。

応急住宅への入居が始まると、通勤が変わる

応急住宅は、元の住まいの近くに建つとは限りません。県が整備する建設型は宇城市・氷川町・美里町・八代市・熊本市に分散しており、賃貸型は空室のある地域に入ることになります。従業員が入居先を決める段階で、通勤経路と所要時間が変わります。

いま被災地の交通は、九州新幹線の熊本〜新水俣と鹿児島本線の宇土〜八代が8月中の再開困難、肥薩おれんじ鉄道の八代〜水俣は代行バス、九州道の松橋IC〜えびのICと南九州道の八代JCT〜田浦ICは一般車両が8月後半までは通れない、という状態です(記事037記事040)。この条件下では、住まいが20キロ動くだけで通勤時間が倍になることがあります。逆に、鉄道が止まっている区間を避ける位置に移れば、通勤が一気に楽になる人もいます。

大事なのは、入居先の決定が本人の生活再建の判断であって、職場が誘導すべきものではないという点です。職場ができるのは、「そこに住んだ場合、当面の通勤はこうなる」という情報を、決める前に渡すことです。9月上旬から入居が始まる見込みとされており、今週が情報提供の適期になります。

連休をまたぐことの意味

8月13日から16日は多くの窓口と医療機関が閉まります。この4日間に移動が起きると、罹災証明の申請、住所変更、応急住宅の手続きが連休明けに集中します(記事022)。住家被害認定調査は8市町に調査班が入り、宇土市・宇城市・八代市には各2人の行政書士が派遣されていますが、体制は連休中に細ります。

同時に、発災から2週間を過ぎ、緊張が切れて不調が申告されにくくなる時期に入っています(記事036)。居場所が変わることと、不調を言い出しにくくなることが重なるのが今週です。連休前の今日に一度接点を持っておくかどうかで、8月17日以降に見つけられる範囲が変わります。

実務でそのまま使えるチェックリスト

#今日から3日以内にやること担当の目安
1避難所を連絡先としている従業員を名簿から抽出する人事総務
2該当者に「今どこにいるか/連休中どこにいるか」を1問だけ聞く(理由は伝える)人事総務・所属長
3本人携帯に加えて、連絡がつく第2の手段(家族・SNS・同僚)を1つ登録する人事総務
4応急住宅への入居予定がある人を把握し、入居先候補ごとの通勤経路・所要時間の目安を渡す人事総務
5時差出勤・中抜けの対象者判定を「避難所在住」から「断水地域在住・生活再建手続き中」に読み替える人事総務
6断水が残る八代市・宇城市・氷川町に移る人には、給水と受診の情報を添える産業保健職
7避難所を出た人に、社内の相談窓口と連休中の連絡先を明示する(巡回支援の網から外れるため)産業保健職
8連休明け1週間の窓口通いを見込んで、時間単位年休・特別休暇の運用を事前に告知する人事総務
9住所が変わった従業員の通勤手当・通勤経路の届出を、遡及適用の可否とあわせて案内する人事総務
108月17日以降の面談枠を、居場所が変わった従業員から優先して確保する産業保健職

移動の把握は、監視ではなく連絡可能性の維持のために行うものです。目的を伝えずに所在を聞くと、被災の程度を評価されていると受け取られます。「連休中に連絡が必要になったときに届くようにしておきたい」という一文を添えるだけで、答えやすさが変わります。

参考

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