「休憩・宿泊場所の確保」の必要性
災害発生時は、病院職員は長時間勤務や深夜業務に就くことになります。そのため、適切な休憩や仮眠が取れる場所を提供することは、病院職員の健康のために不可欠です。長時間勤務や深夜業務により疲労が蓄積すると、病院職員の疲労が著しくなり、業務上のミスや事故のリスクが高まります。休憩・仮眠場所の設置により、従業員が疲労の軽減や従業員のパフォーマンスの向上を期待できます。
自宅が被災した職員向けに職場の寝泊まり場所を確保することも検討しておくと良いでしょう。
「休憩・宿泊場所の確保」のBCP策定例
・休憩場所・仮眠場所の設置
・休憩や仮眠に係る物資等の準備(ベッドやソファ、布団、耳栓、アイマスク)
・休憩場所・仮眠時間の確保
・自宅が被災した職員のための寝泊まり場所の確保
収集したBCPの良好事例
事例1
・発災後6時間から3日以内に休憩場所を提供する。
・場所は施設の状況に応じて○○、△△、□□の中から決定する。
・職員寮に空きがあれば提供を検討する。
Point
設置するまでの目標時間を明記され、具体的な場所を休憩場所の候補として列挙されている
事例2
①フェーズⅠ・・・災害対応初期は、特に臨機応変な活動が求められるため、
休息の判断は、職員自身、部署リーダー及び本部の判断において適宜行い、
栄養・水分補給、トイレや休憩(短期)の際は部署リーダーに報告する。
②フェーズⅡ・・・原則、交代制を取る。本部は事前に支援医療チーム等を加味した交代制案を作成し、部署リーダーが調整し実施する。
休息に入る際は、本人が本部に行き、本人所属の部長等と職員ホワイトボードのネームを休息先等の場所に移動する。
(所属部長は職員の体調に注意を払う)また、医療救護活動中の休息場所はリハビリテーション科(変更の際は本部が周知)とする。
但し、各自の部署内などでの休息も可とする。
③フェーズⅢ・・・通常の勤務体制移行を加味した交代制を行う
Point
各フェーズに合わせた対応や連絡体制が示されている
事例3
仮眠スペースの確保
責任者…職員施設管理担当 医務課長
連絡先…医務課長○○○○ 医事班長△△△△ 防災センター職員□□□□
構成要員…医務課長 医務課職員 SE 医事班長 診療情報管理士 防災センター職員
概要…仮眠スペースを6階会議室の東会議室を男性・西会議室を女性とする。
作業手順…毛布・敷物を仮眠スペースに準備する。仮眠中の職員名を入口ドアに記載する。
Point
男女で分けられた休憩スペースの確保や、設置にあたっての必要な物資や指揮命令系統が示されている
事例4
業務名…帰宅困難者への宿泊場所等の提供
方針…自宅等への帰宅困難となった職員の保護
担当部門…災害対策本部(安全統括部門・院外対応部門)
責任者…安全統括者 (代)院外対応統括者、安全担当者、院外対応担当者、渉外広報担当者
目標レベル…帰宅困難者及び長時間勤務者への宿泊場所の確保と提供
目標時間…発災後~随時
役割及び活動内容…院外宿泊施設との連絡調節。利用方法等、職員への通知。
必要情報…院外宿泊施設連絡先 (代)宿泊施設との連絡途絶時には、直接訪問も企図
体制…安全統括者以下、数名 (代)災害対策本部、災害対策本部が指名した職員
物品…通信機器 (代)宿泊施設との連絡途絶時には、直接訪問も企図
場所…災害対策本部 (代)外部との通信が可能ないずれかの場所
課題…院外宿泊施設との折衝が未完了であること
Point
帰宅困難となった職員に対する宿泊場所の提供や代替案の準備が示されている
事例5
仮眠スペースの確保
④発災6時間後~当日中(24時間以内)および翌日
開設レベル…災害レベル:3
責任者…○○
設置場所…新館4階 △△
連絡先…事務長室・新館4階 △△
構成要員…総務部・健診センター職員
役割及び活動内容
1.職員の被災状況、仮眠スペースの確保
①災害対策本部は在院職員でローテーションを組み直し、活用できる空間が予定どおり使用できれば使用する。(新館4階 △△)
②各部課長は、臨機応変に仮眠が取れる時に摂らす事。
③仮眠スペースは利用ルールを厳守し利用者に周知、協力を求める。
2.仮眠スペース・ルール
① 仮眠時間は、職種にて違いがある為、後から来た職員は先の仮眠者の邪魔にならないように配慮し仮眠する。
② 仮眠スペースは、あくまでも仮眠のみで説話、食事はしない。
③ 軒をかく者は、集団の中で仮眠をとる事は厳しい為、上司が配慮する。
④ 風邪症状、有熱等、感染の恐れがある職員は、隔離スペースが取れる様に配感する。
3.仮眠スペースが院内で確保できない場合。
①□□ホテルなどと、有事に備え協定を結ぶ事も考慮する。
② 協定が結べていない時は、直に相談し空室を借りる事を相談する。(災害対策本部:事務長、室長)
必要物品(保管場所・数量)…毛布(庶務課・各病室)・ホッカイロ売店。各病棟の布団等。
現在不備のあるもの…毛布・暖房器具・ホッカイロ。
備考…仮眠スペースが新館4階△△で確保しきれないかも。臨機応変に空きスペースを確保して休憩する。
Point
個人の事情に配慮したルールを策定されている
仮眠スペースが不足するケースを想定し、外部の関連施設と連携を図ることが示されている
良好事例6
睡眠場所の確保
課題:災害時は長期間にわたり従事しなければならない業務がある。
帰宅せず業務に当たる教職員への睡眠場所の確保は、事業継続での観点から見ても重要である。
対策:睡眠場所の確保は健康管理面からも重要である。発災後、部局隊は早い段階で教職員用の睡眠場所の確保を図らなければならない。場所の選定については、緊急出動が可能な場所であるか、耐震施設であるか等考慮する必要がある。合わせて、毛布等の必要物資についても事前に確保しておくものとする。
※津波浸水時における場所(スペース)をあらかじめ検討しておく。
Point
職員の睡眠の重要性や、睡眠場所の選定にあたっての基準が示されている
事例7
業務名…医薬品・ライフライン等その他付業務職員休憩所設営、職員休憩所設置
方針…職員が休憩できるよう場所をもうける
担当部門…施設担当
責任者…施設担当係長
目標レベル…職員がある程度参集できたら、順番に休憩をとり健康を害さないようにする
目標時間…3日以内
役割及び活動内容
厚生研修とA棟の間の防火扉閉鎖
休憩所にシートを敷き簡易的な休憩ができるようにするローテーション表を本部へ依頼する
メンバー…施設担当 休憩所の準備、必要物品を本部へ依頼する
必要情報…休憩所の場所連絡
体制…施設担当
物品…床に敷くシート
場所…厚生研修棟
課題…部屋が狭い可能性あり、ローテーションが決まるか、職員以外に情報が出ないようにする
Point
休憩場所設置の目標レベルとそれを徹生するまでの目安時間が設定されている
事例8
1) 仮眠スペースの設置
仮眠室の確保ができない場合、2階外来待合に設置する。設置の準備は、災害対策本部総務課総務担当が行う。
アメニティ(仮眠テント・枕・毛布)を用意し、貸出時間を決めたのち、使用者、時間を管理する。
Point
寝具の貸し出し状況や設定時間、担当者が示されている
事例9
職員の休憩(仮眠)場所と食事・飲料水等
i) 職員の休憩(仮眠)場所
当面、職員が仮眠する場所はX階XX室、第X教室(計 100名)
・医師…医師仮眠室、医師直室、外来診察室、処置室のベッド、医局周辺、地下の空きスペース
・看護師…各病棟休憩室、4階看護師休憩室、4階男性看護師仮眠室、更衣室、地下の空きスペース
・事務その他…5階応接室、各事務所、各休憩室、地下の空きスペース
※○○センター、△△倉庫から安眠セットと毛布を運び込む。
Point
職種別に休憩(仮眠)場所を分割し、スペース確保が示されている
事例10
時系列…発災数時間経過後
業務内容…スタッフの休息の確保
想定トラブル…災害発生による緊張や人員不足から、休息をとらずに働き続けることによるスタッフの疲弊
対応方法
・勤務できる人数を把握し、その中でシフトを作成。慣れない環境での動務になるため、短時間勤務になるよう対応
・スタッフが順番かつ半強制的に休息を確保出来るよう開整。休息場所は○○室にマットを敷き仮部屋とする。
足りなければ面談室もマットを入れてスタッフの休題所とする
Point
急性期の疲弊を防止するために休息をとらせることや場所が示されている