病院BCP 「ローテーション勤務」の策定

「ローテーション勤務」の必要性

災害時にも、医療機関は24時間の勤務体制で継続的に医療提供体制を維持することが求められます。災害時には、業務が増大する一方で、人員が減少することがある中で、臨時の勤務体制を組むことが求められます。また、普段は交代制勤務を組まない部署・人員についても24時間勤務・ローテーション勤務を想定しておくことも検討されます。外部からの支援を受け入れることも災害時特有のローテション勤務体制の困難さです。

ローテーション勤務」のBCP策定例

5.1被災状況に応じた持続可能な態勢の構築

災害対応は、発災時間帯や災害規模等に応じた態勢で対応することとなるが、特に大規模災害の発生直後は、24時間態勢で非常時優先業務に従事することが想定されるため、早期に持続可能な態勢を構築することが重要となる。災害対応が長期にわたる場合は、早期にローテーションを組むなど、持続可能な態勢を早期に確立する。ローテーション勤務を決定する際に、発災後最初の正規の勤務時間が終了するまでに整理するよう努め、特に夜間の休憩時間を十分に確保するなど、職員の健康維持に配慮する。災害対策本部会議等において、各局等にも持続可能な態勢構築を指示する。災害対策本部等は、被害への対応状況等を踏まえ、必要に応じて、態勢の維持・縮小、業務密度の低い部署から高い部署への配置転換の必要性等を判断する。非常時優先業務に従事する必要がある職員については、引き続きローテーション勤務で対応する。また、配置転換の必要があると判断した場合、配置転換を命じられた職員は、配置転換後の業務が決定されるまでの間、職場待機し、配置転換後は、ローテーション勤務で対応する。災害対応が長期にわたることが想定される場合、各局等は、早期に24時間以上の休憩を交代で与えるなど、自宅の被害状況の確認等に戻れるように配慮する。

<ローテーション勤務の考え方>
・24時間対応の場合、勤務時間を3分割する3交代制と、2分割する2交代制とが主として考えられる。
・勤務時間外の発災の場合など、特に非常時優先業務に従事する職員が少ない発災当初は、参集時刻が遅い職員を最初の交代要員として指定し、ローテーションを組むなど、従事可能な職員を可能な限り継続的に確保できるよう工夫することが求められる。
・発災当初など、夜間であっても対応する業務が多く、従事可能な職員数が少ない場合には、1日11時間勤務で休憩時間2時間とするなど、2班2交代制による勤務が考えられる。
・2班2交代制による勤務は、特に参集職員数の少ない時期に有効であるが、長期にわたり24時間対応が必要となることが見込まれる場合には、早期に4班3交代制に移行するなど、職員の休日についても考慮する必要がある。

【3交代制勤務の例】
・正規の勤務時間である1日7時間45分勤務を基に休憩時間を1時間とし、4班3交代制による勤務を考えた場合、勤務時間の重複する45分間については、引継ぎ時間として確保し、円滑な業務遂行が可能となるよう配慮する必要がある。

※公共交通機関が動いているときには、終電の時間を考慮してシフトを組むなど、柔軟に対応することが重要

※対応する職員が不足し、休日を考慮したローテーションを組むことが困難な場合であっても、各業務を担当する全職員が、常時対応しなければいけない状況とは限らない。各業務の特性に応じて、可能な限り交代で休憩が取れるよう、所属長や班長などが配慮することが、長期にわたる災害対応においては重要。

収集したBCPの良好事例

事例1

①フェーズⅠ・・・災害対応初期は、特に臨機応変な活動が求められるため、休息の判断は、職員自身、部署リーダー及び本部の判断において適宜行い、栄養・水分補給、トイレや休憩(短期)の際は部署リーダーに報告する。

②フェーズⅡ・・・原則、交代制を取る。本部は事前に支援医療チーム等を加味した交代制案を作成し、部署リーダーが調整し実施する。休息に入る際は、本人が本部に行き、本人所属の部長等と職員ホワイトボードのネームを休息先等の場所に移動する。(所属部長は職員の体調に注意を払う)また、医療救護活動中の休息場所はリハビリテーション科(変更の際は本部が周知)とする。但し、各自の部署内などでの休息も可とする。

③フェーズⅢ・・・通常の勤務体制移行を加味した交代制を行う

Point
フェーズに合わせた勤務体制の変化が示されている

事例2

部門…高度救命救急センター
災害レベル…災害レベルⅢ
・○○観測所で水位7.1mを観測し、「はん濫危険水位」に到達。
・△△市が「はん濫危険情報」を発表。
・△△市が「避難指示(警戒レベル 4」を発令。
※状況に応じて変更の可能性あり

【人員面】
<職員管理>
・宿泊希望者数(帰宅困難者、出勤困難者の前泊)追加の確認
・本部から指定された宿泊場所を職員に伝達
・本部の方針に沿って職員へ帰宅、登院に係る伝達
・出勤不可能数の把握、応援が必要な場合看護部に連絡
・帰宅困難救命センタースタッフのシフトを2グループとし、周知する。休憩時間や休息の確保ができるよう調整する。
・避難病棟の状況を確認し、必要時調整を行う。

Point
スタッフのシフト体制を示している設けている

事例3

健康管理

課題:従事する教職員の最低限の健康管理には留意しなければならない。
対策:避難所業務のように、実際に休憩時間の確保が困難な業務については、教職員の勤務が長時間にわたらないように、交替の教職員を派遣して休憩をとらせるなど健康に配慮しなければならない。また、災害対策の長期化に備えて勤務班と休憩班を分けて交互に勤務に当たる交替勤務制の実施も検討する。職員は、交代制で勤務する場合については、原則として帰宅しない日が3日を超えることがないようにする。

Point
多忙が想定される業務に対して事前に交替で従事することを示している

事例4

交代勤務

大規横な災害であるほど、対応は長期間にわたります。一方で医療機関の業務は 24時間つねに継続することが求められるため、これを担う職員は必ず交代して休養をとりながら勤務する必要があります。

・施設全体としても、対応の初期の段階から職員の交代を見据えておかなければなりません。必ずしも最初から職員の全員参集をしない、勤務のローテーションを早期に作成するなどの工夫が重要です。職員個人としては、施設の方針を事前に把握し、対応を準備しておく必要があります。

Point
24時間勤務や交代して休養をとりながらの勤務を行うことを示している
最初から全員参集しないことを示している(疲労対策として有効)

事例5

統括責任者…1.○○院長補佐
看護部担当者…1. △△部長 2.入院・外来統括次長
事務部担当者…1. □□課長 2. ××課長補差
集合場所…災害対策本部 火災:防災センター 地震・その他の災害:中央会議室
業務内容
職員の安否確認及び参集状況把握
・災害対応の人員配置及び労務管理
・帰宅困難者、職員家族の休憩所管理
① 職員の安否確認情報を情報統括Grに確認する。
② 在院者数及びけが人の状況を情報統括Grに確認する。
③ 職員参集受付を医局管理棟地下1階大会議室前に設置するよう職員家族対応班に指示する。
④ 職員の勤務状況を確認し、シフト体制を調整するよう職員配置に指示する。
⑤ 職員と家族の休憩所を開設するよう職員・家族対応班に指示する。
⑥ 応援が必要な部署には人選し応援班を編成するよう救出・救護・応援班に指示する。

Point
災害発生後にシフト体制を調整指示を行うことを示している

(災害発生後には、被災した職員が出勤できないことが想定されるため、シフト体制を組み直す必要がある)

事例6

職員配置班
担当部署…看護部管理室専門看護室
集合場所…災害対策本部(数名) 看護部管理室(職員配置調整)
業務内容…救出・救護応援班の人選及び、派遣業務調整及び勤務シフトの調整、災害規模による体制の変更に対応した人員配置
① 2~3名は災害対策本部に移動する。
② 残りの職員は看護部管理室で業務を行う。
③参集職員の人数、職種を職員・家族対応に確認し把握する。
④本部からの応援要請に適した人員を選出し、派遣する。
⑤ 災害対応が長期化した場合にはシフトの調整を行う。
⑥強化する業務、縮小する業務を考慮し、人員配置を行う。
⑦ ボランティアや応援者の配置を決定する。

Point
災害対応が長期化した場合のシフトの調整を行うことを示している

事例7

開設レベル…災害レベル:3
責任者…①○○ ②△△
設置場所…4 階看護部長室・災害対策本部
連絡先…4階看護部長室・災害対策本部
構成要員…外来看護師・病棟看護師・看護部長・総務部・医事係
役割及び活動内容

1・医師
①夜間、土日、祭日は当直医師、各科コール医師で6名になる。ほとんどが××市内からの通勤である。夜間に発災した場合は、□□市内在住の6名で対応する事となる。夜間当直医師は院外医師でも夜間は暫定本部長として院長が来院するまで指標をとる。
② 平日、日勤は常勤が11名なので、発災直後は在院医師だけでローテーションを組む。24時間以降は落ち着けば勤務表を作成する

2・看護師
① 夜間、土日、祭日は看護師数が平日より少ない為、24時間過ぎれば状況が分かってくる。24時間以後は在院、参集看護師で勤務ローテーション表を作成する。
② 看護職員は自分の家族等の避難の問題に目途がたてば参集する事をお願いする。

3.コメディカル
① 夜間、土日、祭日は平日より少ない為、24時間過ぎれば状況は分かってくる。各部署、勤務ローテーション表を作成する。
② 職員は自分の家族等の避難の問題に目途がたてば参集する事をお願いする。医師、看護職は患者を看ていかなければいけないのでコメディカルの応援がないと思うように活動ができない。必要物品(保管場所・数量)…勤務白紙用紙・筆記用具。
備考…ローテーションできるほどの参集職員が確保できるか不明。

Point
職種毎に発災時の状況に応じたローテーションを組むことが示されている

事例8

重要業務(大項目)…生活支援
重要業務(中項目)…職員(交替勤務、食事、睡眠、その他の生活支援等)
(6時間以内)
ロ 職員の勤務体制(交代制度、代替要員)について方針検討を開始する
(12時間以内)
ロ 職員の交代勤務を開始する
(3日以内)
ロ 支援要員及び職員の食事について、○○大学附属病院長会議に支援を依頼する
(1週間以内)
口 職員家族の被災状況について、スクリーニングを開始する

Point
時系列に沿った業務内容を決め、その中に交代勤務の開始を示している

事例9

(3) 臨時勤務体制について
参集職員の休息場所は、原則として3階西病棟 屋内退避施設エリアとする。
臨時勤務体制をとるかについては次による。

ア 2日程度で災害時対応が終了する場合(DMAT出勤がない)
原則として、臨時勤務体制はとらない。2日程度で災害時対応が終了する場合、臨時に編成された各班リーダーの判断により適宜休息をとる。

イ 災害時対応が3日以上の長期に及ぶと判断される場合(DMAT出動もあり)
(ア)災害時対応を開始してから2日目以降については、原則として参集可能な職員を3個クルーに分け臨時勤務体制で対応する。
(イ) 3個クルー編成以降は、原則として8時間勤務の臨時勤務体制で対応する。

Point
臨時の勤務体制をとる状況を具体的に示している

良好事例10

メンバー…職員配置・安全班
対応組織…経営管理部員(人事係中心)
組織化順位…A

役割
参集した在院職員、召集された職員に対し役割を任命
職員の配置状況をホワイトボードに掲出
各班の職員の過不足や勤務状況に基づき、職員を再配置
各班に勤務している職員の以下の情報を定期的に収集
 ・各班の統括者および担当者の氏名
 ・各班の職員数
 ・各職員の勤務時間、体調など
職員の仮眠場所確保

Point
職員の人数や勤務時間、体調といった状況の変化に合わせて勤務調節することを示している

イメージ図

ローテーション勤務がBCPに策定されていなかった事態のイメージ画像をAIで作成しました。

Screenshot