病院BCPの良好事例 〜その他の健康管理〜

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その他の健康確保策について

方針、休憩・仮眠場所の設置、ローテーション勤務、勤務間インターバル、過重労働面談や、メンタルヘルス対策、健康相談窓口、など以外にも、次のような健康管理施策が考えられます。それらをBCPに盛り込むことで、病院職員が健康を維持しながら、業務に従事することが期待できます。病院の状況に応じて策定をご検討ください。

・ラインケア(管理職向け)研修の開催
・セルフケアのための方法や考え方などの情報提供
・暑さや寒さ対策
・保護具や感染対策備品、衛生備品等の準備

良好事例

良好事例1

職員の体調管理について

災害時には、限られた資源の中で事業を継続する必要があるが、複数の専門職があって成り立つ医療機関にとって、”人的資源”は重要な資源の一つである。医療機関は、当然のことながら負傷者への対応が任務であるが、そこためにかえって自分自身の健康の問題を自覚しにくく、また自覚したとしても使命感のため休息、治療が後回しになりやすい。短期的には不眠不休の対応に当たることができたとしても、事態が長引いた場合には、問題が生じ得る。今後の対応として、災害医療活動が中長期化することを見据えた職員の体調管理等の対策を検討する。

【支援者のストレス要因】

  • 災害関連業務や長時間勤務によって疲労が蓄積する。
  • 使命感と現実の制約の間で葛を生じやすい。理想とする支援ができず、罪悪感や無力感を持つことがある。
  • 負傷者から怒りや不満をぶつけられることがある。
  • 災害現場の目撃によってトラウマ反応が起きる可能性がある。
  • 支援者自身や家族が被災者であっても、そのケアや支援を後回しにして、業務にあたらざるを得れ場合がある。
  • 被災地以外からの支援者は、生活の不規則化や普段のストレス対処法を実践することが困難にる等によって、ストレスを蓄積しやすくなる。また、災害とは関係のない家族の問題を抱えている場合、出向が長期化すると、それが顕在化することもある。

【ストレスへの対策(組織として)】

  1. 役割分担と業務ローテーションの明確化
  2. 支援者の活動期間、交代時期、業務内容、責任を早期に明確にする。
  3. 支援者のストレスについての教育ストレスを感じることを恥じず、適切に対処すべきことを教育する。
  4. 支援者の心身のチェックと相談体制
    心身のチェックリストを支援者に渡し、健康相談が受けられるようにする。
  5. 住民の心理的反応についての教育
    住民の心理的反応として、怒りの感情を向けられることを教えておく。
  6. 災書現場のシミュレーション
    災害現場や死傷者の光景についてスライド体験でシミュレーションを行なう。
  7. 業務の価値付け
    しかるべき担当者が救助活動の価値を明確に認め、労をねぎらう。

出典:平成13年度厚生科学研究費補助金(厚生科学特別研究事業)「災害時地域精神保健医療活動ガイドライン」を参考に作成

【ストレスへの対策(リーダーの役割)】

  1. リーダー自身がストレス処理のよい見本になること。
  2. 活動計画、役割分担を明確に指示する。
  3. スタッフのことを気にかけていることを行動で示す。
  4. どんなに忙しくてもスタッフに定期的な休息をとらせる。
  5. ミーティングを開き全員でストレス処理を行なう。

出典:日本赤十字社「災害時のこころのケア」(平成20年8月)を参考に作成

【ストレスへの対策(セルフケア)】
支援業務にあたっては、
・なるべくチームで活動する
・ほんの少しでも休息をとる
・短時間でできる自分に合ったリラックス法を実践する
・仲間や家族、友人とまめに連絡をとるなどを意識して、自分へのケアが後手にならないようにしましょう。

出典:日本身医学会「学会誌心身医学 災害支援と自治体職員の心身のケア」(2017.No.3 Vol.57)

東日本大震災直後の産業医から神戸市職員へのメッセージより抜粋

良好事例2

x.勤務職員の家族支援

x.1 家族支援の必要性
突然の発災時に病院に勤務する職員は、超急性期において混乱するなか、通常を超える医療ニーズや不足するマンパワーのなかで長時間勤務を強いられることが想定される。被災状況によっては、避難所生活からの出勤という状況が長期間に発生することも考えられる。職員自身の応援要員や交代を配慮することだけでなく、その職員が安心して業務を継続できるよう、職員の家族支援策を実施することが求められる。

x.2具体的な家族支援策例
具体的には、以下の例を列挙するので、職員からのニーズ、被災状況や提供可能な資源を考慮し、実現可能な対策を災害対策本部にて検討する。

  • 勤務時間中に家族安否のための確認連絡時間を確保
  • 自宅損壊等が著しいと想定される際、勤務中の一時離院を許可
  • 自宅損壊やライフラインが途絶する地域にいる場合、一時避難場所の提供や確保
  • 利用していた保育所・幼稚園、小学生の学童保育等が休校になった場合の代替サービスの提供
  • 利用していた介護サービスなどが継続利用できない場合の代替サービスの提供
  • 被災した職員家族や職員自身のメンタルヘルス支援
  • その他、生活基盤が著しく損なわれた場合、その復興支援のための諸策

良好事例3

時系列…発災後24時間
業務内容…精神的・身体的ケア
想定トラブル…患者やスタッフの疲労、勤務管理

対応方法

  • 4時間毎に本部へ報告(スタッフ人数、患者人数、感院困難者数、一番問題になっている事、困っている事)
  • 必要な業務を洗い出し、ケアは最低限必要なものとし、緊急医療体制中の業務を決める。(検温/PC/ケアなど、誰が、いつ、どのように行うか)、機能別看護へ体制変更
  • スタッフの休憩場所と時間の確保をする。
    (休憩場所は○○、△△休憩室、PICU奥、課長部屋期、ダム機。通常業務時間ではなく、災害用の業務体制とする。6時間労働を目安)
  • 仮眠室が不足するようなら□□大学も休憩場所に考慮する
  • 緊急連絡網を活用し、スタッフの安否と出勤・労働可能かの確認を行う
  • 何人のスタッフが乗務しているか把握し、休息がとれるようシフトを組む
  • 必要時、職員同士で訴えを吐き出せる環境を作り、心のケアを実施。最悪の場合、臨床心理士と連携も検討する

良好事例4

安否確認・参集連絡体制
安否確認及び参集連絡体制は、近年のBCPの考え方を基本に各部署メーリングリスト等により効率的・効果的に安否確認・参集連絡を行うこと。

1. 大規模地震災害発生時は、参集計画に沿って参集連絡を実施すること。
2.平日日勤帯の自動起動参集連絡以外の参集連絡業務は、災対本部の総務班又は警戒本部の院内ロジ職員が行うこととし、休日、夜間の場合の参集連絡業務は日当直師長及び暫定災対本部の業務とする。
3.災対本部又は警戒本部は、災害規模に応じた職種及び必要人員を算定し、メーリングリスト等による安否確認・参集予定時間リスト(様式7)の集計結果から、3日間程度のシフト表を作成し、メーリングリスト等により個別に追加参集連絡を行う。
4.各部署の責任者はメーリングリスト等により所属職員の状況を確認すること。
5. 参集職員登録及び帰宅登録
・災害レベル2・3・4では必ずメーリングリスト等により参集登録を行うこと。
・病院到着時は、必ず災対本部等に参集職員登録を実施すること。
・日勤帯時の在院者は、必ず災対本部等に参集職員登録を実施すること。
・帰宅時は、必ず災対本部等に帰宅登録を実施すること。
・帰宅時は、必ず災対本部等に帰宅登録を実施すること。

6.業務委託・嘱託、派遣職員の参集方法
・職員と同様とし、業務委託・派遣の請負業者等は、業務ごとに緊急連絡網を整備し、病院との窓口となる管理責任者をそれぞれのマニュアル等に明記すること。

7.その他の留意事項
・災害発生時、公共交通機関の運行状況により、帰宅困難或いは帰宅後の登院困難が予見される場合は、できる限り病院内に留まり、災害対応に備えること。
・参集する職員は、災害対応の長期化を見据え、登院後数日程度帰宅しなくてもよい準備をし、2・3日分の飲料水や携帯食料、着替えを持参すること。
・職員が連続勤務により体調をくずさないよう、各部署の責任者は休憩や仮眠などがとれる場所を設定し、体調管理及びシフトに考慮すること。
・空調機器の被害を想定し、厳寒・酷暑期における暑さ寒さ対策を平時に検討しておくこと。・職員の休憩・仮眠場所を確保し、寝具、飲料水等を準備すること。
・参集時の服装は、底の丈夫な履物、帽子又はヘルメット、ゴーグル、マスク、軍手、懐中電灯、カッパ、タオルなど、災害地内を安全に行動できる服装、装備で参集すること。
・職員は、平時より動員計画及びアクションカードに記載された担当事項、各フェーズでの参集方法について平時にシミュレートし、参集に掛かる所要時間、参集手段等を把握しておくこと。

良好事例5

時系列…2、3日後
経時タスク…スタッフ
業務内容…スタッフの自主参集
想定トラブル
・長時間労働となる可能性
・疲弊によりスタッフが体調不良となる
・スタッフのストレスが溜まる
・人員不足対応方法
・休憩室やドクターカンファレンス室で休憩できるように調節
・休憩中など辛いときは辛いと言えるような環境にする
・勤務した日付・時間を用紙に記載
・交代勤務やシフトの組み方を工夫し、帰宅できる時間を作る
※シフトはスタッフの状況をみて長が作成。課長が困難な時は係長が代行で作成する

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